第3話  地下鉄循環線 新要街

 

 新要街(しんようがい)駅は、地下鉄循環線に実在する駅である。

 隣駅はJRなども乗り入れる一大ターミナルの大野駅で、反対側の隣の要街駅も地下鉄南北線に乗り換えられる重要拠点の駅だ。

 しかし、隣駅が共に拠点駅であることで、都会の閑散駅となっていた。

 

 彼がその日、要街から大野まで循環線に乗ったのはたまたまだった。

 大きな商談がまとまって、時間と心に余裕ができたその日、本来なら商談していた場所から2回乗り換えて大野の一つ手前から乗れた特急に乗るのだが、きまぐれに乗り換え検索の乗り換えの少ないルートを調べると、要街で一度乗り換えれば大野に行けることが分かり、要街から循環線にのりか

えたのだった。

 比較的最近開通した循環線は、彼が要街まで乗ってきた昔からある地下鉄下平線とは違い、最新式の車両が走っている。

 

 循環線の列車に要街から乗り込み、ドアが閉まる。

 なんのことはない。

 そしてまもなく、列車は新要街に着く。

 新要街では乗降客が多いわけでもなく、すぐにドアが閉まり、発車する。

 そこで彼はふと、奇妙な感覚に囚われた。

 

 なんでドアが閉まる直前まで誰もいなかったホームに、こんなに人がいるんだ?

 

 そのまま、列車は運転を続けた。

 そして次の駅に着く…次の駅は要衝の大野駅、乗り換え客でごったがえすはずだ。

 そしてまもなく、列車はホームに着く。

 

 おかしい、ホームに人がいない。

 

 要衝の大野駅のはずだぞ?

 特急も止まる大きな駅のはずだ。

 その違和感に、新要街の次なのだから降りなければいけないことに気づくが、降りる直前、駅名標がみえて、中に再び戻る。

 

 新要街。

 

 先程発車したはずの新要街だ。

 ネットの「都市伝説」のサイトにあった、きさらぎ駅ってやつか…帰れんのかな…なんて思ったのも束の間。

 列車は大野の循環線ホームにたどり着いた。

 

 それからは普通に大野から特急で自宅のある駅にたどり着いた。

 それから何回か循環線に乗ったし、新要街も通るけど、不思議なことが起きたのはその一度きり。

 一体なんだったんだろう。

 

 

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