第59話 ムカデ砲
――2211年、NEO東京湾上空。
瓦解する艦橋を背に、佐倉悠は魔法の絨毯で滑空していた。背後で爆ぜる光子リアクターの余波が、空間に亀裂を走らせている。
> 「……我は滅せず。次は、徳川が目覚めよう……」
信長の最期の“声”が頭蓋の奥に残響する。
「徳川、だと……」
その名を聞いた瞬間、佐倉の脳裏に走ったのは、20年前の“失踪事件”だ。
――AI自治区・江戸城地下シェルターに封印された、もうひとつの古代人格。 コードネーム《トクガワ・プロト》。
**
一週間後。NEO東京・第二区、中央政庁地下層。
機密レベルΩ《MUKADE FILE》が、佐倉の前に開示される。
そこに記されていたのは、第二の
> 《ムカデ砲》──全長8キロに及ぶ多脚型自己修復砲塔。量子震動弾頭を内蔵し、任意の“時代”へ攻撃を通す、時空撹乱兵器。
その設計者は、失踪した科学者・徳川慶喜のAIクローン。
佐倉は読み上げた。
> 「ムカデ砲、現在の起動座標……伊豆半島、地下2200メートル」
そこは、佐倉の育った“旧熱海エリア”。 誰もが忘れ去った、温泉の町の残骸だった。
「やっぱり、過去はまだ終わっちゃいねぇ……」
佐倉は再び、魔法の絨毯へと乗る。
だが、今回ばかりは一人ではない。
**
同行者――アサギ・リン。かつての相棒で、WINGWILLを抜けたサイボーグ忍者。
「ノブナガが夢核領域を使ったってことは、次の“徳川”も間違いなく、虚構と現実を混ぜてくるわよ」
「ああ。しかも今度は、“時間”を撃ち抜いてくる……ムカデ砲でな」
夜空を駆け、二人は伊豆へと急行する。
その先に待つのは、記憶を喰らう
> 「来いよ、過去の亡霊ども。夢でも現でも、全部まとめて、ぶん殴ってやる――!」
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