第41話 斬首

 ◆ 《戦後の静寂》を切り裂く者──“影斬の処刑人”


 勝利の余韻すら満ちる間もなく、空気が再び凍る。


 札幌駅北口に差し込む光、その背後から──

 影がひとつ、無音で現れる。


> 「終わってなどいない。夢は、斬り捨てるものだ」




 その声と共に、黒装束の男が姿を現した。


 名は《久世 鷹正くぜたかまさ》──

 元はドリカム社の粛清部隊DREMELの執行官、

 現在は義元亡き後に暗躍を始めた新興武装宗派無響教団の幹部にして処刑人。


 彼の手には、異形の夢断ノ太刀


 夢想・思念・記憶といった非物質的概念を“斬首”する能力を宿しているとされる。



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◆ 急襲:幻律弦を断つ刀


 再建に向け動き出そうとした佐倉の背後に、久世が瞬間移動のように現れる。


 そして――その刀が《Rebuild幻律弦》のボディに振り下ろされる。


 鋭い金属音と、空間そのものが“切れた”ような感覚。


 幻律弦が、音を失う。


> 久世「夢に酔った愚者よ。今、首と共に“意味”を奪う」




 佐倉の首元へ、次の一太刀が迫る。



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◆ ユウトの咆哮と、決意の盾


 即座にユウトが身を挺して割り込む。EMPライフルで斬撃を逸らすが、刃は彼の左腕を深く裂く。


> ユウト「……これが、夢を信じた“罰”ってわけかよ……佐倉。もう一度、音を響かせろ」




 ユウトは、背負っていた《響律増幅器:奏柱(ソウチュウ)》を佐倉の足元に投げる。



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◆ 禁断の共鳴起動:《幻律弦:Harmonia Overdrive》


 壊れた幻律弦と、増幅器奏柱が、ZONE-0時代のコードと融合する。

 かすかに、光が走り、音が戻る。


 だがこれは不安定な“代償共鳴”。

 使用者の神経を文字通り“弦”として共鳴させる、命削る演奏だった。


> 佐倉「……それでも……斬首される前に、奏でてみせる」

♪「もう一度、ここからだ――!」


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◆ 最終交錯:夢を斬る者 vs 音で抗う者


 幻律弦:Harmonia Overdriveが、音を放つ。


 旋律は《夢断ノ太刀》の軌道すら狂わせ、久世の冷徹な動きに乱れを生じさせる。


 ユウトは傷ついた身体で支援コードを入力し、音波の共鳴パルスを発生。

 佐倉の音が、久世の脳内AIに干渉する。


> 久世「な……この音は……」

 佐倉「夢は、切れねぇ。“響く”限り、生きてるんだよ」



 ラストコード、《断罪(Final Note)》が放たれる。

 音波の刃が、夢断ノ太刀ごと、久世の仮面を斬り裂いた。



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◆ 処刑人の敗北と、《最後の斬首》


 久世は崩れ落ちる。

 だが、最後の執念で自らの首を掴み、佐倉に笑う。


> 久世「ならば……夢の真価、見せてもらおう……この“首”をもって……」


 そう言い残し、自らの首を斬り落とす。

 刹那、彼の身体は塵のように崩壊し、まるで存在ごと消されたかのように消える。



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◆ 静寂のあと、札幌に鳴る再生の調べ


 朝日が、瓦礫と血の匂いを照らす。


 ユウトは片腕を失いながらも、笑う。


> ユウト「ゼロにも、マイナスにもなったけどよ……ここからが本番だろ?」




 佐倉は、再構築された幻律弦を抱き、静かに弾き始める。

 それは、すべての戦いの終わりを告げる鎮魂の調べ。


> 佐倉「……首は落とされなかった。俺たちの“響き”は、まだ終わってねぇ」


 FREEDOM CITYの朝は、静かに始まりを告げた。




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