Zippo

煙草は吸わないし、吸えない

でも化粧ポーチに安っぽい

青いライターが入っている

2週間に一度くらい会うあなたは

本人曰く16歳からの喫煙者

「オレには酸素みたいなもん」

やめさせようとは思わない

それは奥さんの務めか何か

副流煙で一緒に死ぬかと笑うだけ

吸えないと機嫌悪いとか　

禁煙の食事処には入れないとか

そういう類いの中毒ではない

ちょっと斜め下向いて

火を点ける横顔を見てるのは

正直いえば結構好き

良くない煙を愛おしそうに

ゆっくり吸って細く吐き出す

落ち着いた表情が好き

「私にも頂戴」

紙巻きを一本もらってみるけど

「あんたのはふかしてるだけ」

って笑われる

あなたの愛用のzippoの

調子が悪くて　どうしても

火を点けられないことがあった

機嫌悪くはならないけれども

会話が続かなくなった

コンビニもない川沿いを散歩中

終わりにしようかって

こういう時言われるのかな

って根拠のない不安

ひとりコンビニでライターを買う

一番安いやつでいい

安くて軽くて青くて

“プレイボーイ”とロゴが入ってる

あなた用に買った訳じゃない

自分に言い聞かせる

どうしても“火”がいる事態

突然あるかもしれないじゃない？

スナックの女の子みたいに

火を点けてはあげない

困り果ててたらその時言うの

「ライターならあるよ？」

ひとつちゃんとzippoを新調して

“プレイガール”って彫ろうかな

あなただけに寄りかかるのは

だんだんキツくなってきた

次の恋人も喫煙者はOK

でも

次の恋人は既婚者はNG

何で縛るわけじゃないけど

専用zippoで灯してあげる特典付き

あなたと離れたら口寂しくて

私が煙草を覚えるかもね