第2話 俺の後悔は成長していない証拠。(後編)

 俺は一ヶ月前のあやかと復縁するあの頃に戻った。そこから俺の後悔を拾いに行く旅が始まる…


 俺はまったく理解が出来なかった。それは画面越しの君も同じだろう。どうしてこうなったのか、何がきっかけなのか、語彙力をおいてきたかのようにわかっていない。(二つも置いてくるな。)


「錬?起きてるの?よろっと時間でしょ?」

「母さん!?同じこと言わないでくれよ!」


 俺は確信した。スマホが壊れているのではなく、本当にあの頃に戻ったということに。母さんはびっくりした顔して俺にこう言った


「何言ってんの錬、夢見てるんじゃないわよ。早く朝ごはん食べちゃいなさい。あやかちゃん待ってるわよ。」

「母さん、俺しっかり話してくる。自分の意見言ってくる。」

「どしたの急に、錬からそういうこと聞けたの久々で嬉しいわ。でも素直になるところとなっちゃいけないところしっかり弁えることよ。それが親しき仲にも礼儀ありだよ。」


 初めて俺は母さんに自分がどうしたいかを伝えられた気がする。どうしたいかを伝えられなかったから俺は今まで相手からの言葉も得られなかった気がするし、自分にも素直になれなかった気がするんだ。


「ご馳走様でした、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。しっかりね錬。」


 顔も洗ったし、服装もしっかりした…後は待ち合わせに着いてしっかり自分の思いを伝えられればいい…なぜだろうとても緊張する…。待ち合わせ場所に近づくにつれてどんどん鼓動が早くなっている。


 「あ、錬…!おはよう。」


そこにはあやかの姿があった。しかも服装はあの頃と変わらない。俺は服装変えたけどね…。


「おう、おはよ。」


 挨拶してからの空気はとても重い。


「ねえ、なんで今日の待ち合わせ変えたの?」

「え?それは、やっぱりセボンで涼しいほうがいいかなって思うし、コーヒーとか飲めていいかなと思ってね…」

「そうなんだ、私の家でもよかったのに。」


 あの時はあやかの家で話した。しかし、家で話すと、お構いなくあやかは言ってくるしおそらく俺は家に帰れない状態が続くと思ったからだ。


「なんか頼むかい?あやか」

「うーん、とりあえずカフェオレでも飲もうかな。」

「俺が頼んでおくよ。すみませーん」


 綺麗なお姉さんがオーダーを取ってくれた。お姉さんの顔からは普通の友人か仲の良いカップルにしか見えないはず。気まずい空気を作らないことが大事なのだ。


「錬、最近どう?」

(その回答に困る質問やめてくれ)

「どうって、まぁ、、、順調かな…?あやかは学校どう?」

「私、最近資格勉強始めたの。」

「おぉ、資格ってどんなやつなんだ?」

(ここもあの時と同じ会話だ。多分介護福祉士だ。)

「社会福祉士。」

「え、介護福祉士じゃねえの!?」


 俺はつい心の中で思っていたことが言語化してしまった。


「何前から聞いてたみたいな反応、やっぱり面白いね錬。あれ、私錬に社会福祉士言ってたっけ?」

「…いや今始めて聞いた…。でも介護福祉士かなって思ってたんだよ!」

「フフフ…まあ私たち一回付き合ってるからね。」


 俺が弁解をしていると、飲み物とケーキが送られてきた。何を動揺してるんだ俺…。落ち着け…俺…。


「まあ食べようか」

「そだね」


 沈黙の中、ケーキを口に運んでいる二人。改めてじっくりとあやかを見ていると、付き合う前のあの感じが鮮明に思い出す。それと同じように、あの時のあやかも同じ感じだった。


「ねえ錬…最近好きな人とかいるの…?」


 何も予兆がなかったから思わず飲んでいた飲み物が気管に入って噎せた。


「ごめん…!そんなつもりは…」

「そんなつもりは無いのは知ってるよ…でも急になんだよ…」

「私たち別れて一年経つんだけど、錬のことやっぱり忘れられなくて…」


 ここまでは想定通りだ。どう話すかが運命の分かれ道になるだろう。


「私たちやり直さない…?」

「正直、俺はやり直したくない。」

「…えどうして…?」

「俺らが別れた原因って何か覚えてるか…?」

「…私、考え方変えたの!もう一度錬と楽しくやっていきたいから、最近がんばっているの…!」


 店の中の雰囲気がちょっとずつピリついているのが肌でわかるようになってきた。


「あやかが頑張っているのは勿論知ってるよ。それは今見てて感じる。だけど、俺はあやかとはやっていけない。」

「どうして…?」

「十二月二十五日、あやか覚えてる?」

「……」


 十二月二十五日、俺とあやかが過去最大のぶつかった日だ。原因はその前日あやかが約束をドタキャンし、友人と遊びに行った。次の日に俺とあやかは会って話した。


「なんであやかは二十四日、友達と遊びに行ったの?」

「ごめんなさい…二十五日に錬と会えるからいいかなって思っちゃったの…」

「俺が『友達と会っても良いかな?』って言った時あやかなんて言った?」

「…なんで友達が会うの?って言った…」

「そうだよね?しかもクリスマスじゃない日だよ?」


 俺はおかしいと思ったことをあやかに話してたそのとき、あやかの目が一気に変わった。


「もう何よ!そうやって私のことをまた責めるの!?」


 さっきまで泣きそうな目をしながら話していたあやかの目が180度変わったのだ。俺はこうなることは察していたし、覚悟していた。


「ごめん…言い過ぎた…とにかく、俺は寂しかったんだ。一緒にすごせると思ったんだ。」

「私こそごめん…言い過ぎた…今度からなくすようにする。」


あやかは目も合わせず、ただただ黙っていた。


「別れる決め手になったのはあの日だけではない。あやかは俺に『私に何かあったらすぐ言ってほしい』って言ったけど、あの日の逆ギレは何回目だ?」


 俺はあやかに今まで言えなかったことや思っていることをしっかり伝えられている気がする。あやかは涙も流さず、ただ俯いて話を聞いているように見えた。しかし、周りの客の目が気になるが、それは仕方ない。


「あやかが今度こそ頑張るって言ってくれるのはとても嬉しい。だけど、俺は君との未来を考えることは出来ない。本当に申し訳ない…。」

「わかった…。ごめんね…今まで我慢させることばかりで…。」

「もういいよ、過去は過去だと思うよ。あやかはあやかで資格頑張ってほしい。」

「ありがとう。錬も勉強とかいろいろ頑張ってね。」

「ありがとう、今まで本当にありがとう。幸せだったよ。」

「こちらこそ本当にありがとう。私も幸せでした…。」


 あやかは涙が止まらなかった。ティッシュを箱ごと使い切るくらい泣いてしまった。俺も少し言い過ぎたかもしれないが、これも運命だ。この先復縁して、同じような思いは正直したくはない。人は簡単に変われるわけではないのだ。


 お会計後、あやかと改めて感謝を伝えて別れた。俺は後悔を拾って後悔を晴らすことが出来たのだ。これが正しい選択がどうかはわからない。


 帰ってる時にあやかとの思い出がなぜか出てきた。多分後悔のない選択なんてこの世の中には存在しないのだろうと人生が教えてくれたようだった。


                                    END


 最後に

ここまでお読みいただきまことにありがとうございました…。「えーこれで終わりかよ」って思った方、私もそう思っております…笑。本当はもう少しだけ続かせようと思ったのですが、初めてなのでここまでとさせてください…!すみません汗

 次回作もう考えて執筆しております!今度は少し長めに書きますので、また遊びにいらしてください!!ありがとうございました…。

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ぼくの新しい記憶。 @Kinoko_P04

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