蛇は廻る

 グレンが囮になってグリムと戦いだすとレイ達に対する攻撃はなくなった。


「攻撃が止んだ?」


「レイ」


「先生、グレンは?」


「あいつの上で囮になってる」


「囮……、それでどうするつもりなんですか?」


「今の俺達が奴を倒すのは厳しいだろう。いや、厳密に言えば倒せなくはないんだがそれはできるなら最終手段にしたい。だから奴を、グリムを封印する。その為にグレンは今囮になってるんだ。レイ、お前は奴を地面に縛り付けて欲しい」


「地面に縛るってそんなことどうやって……」


「アイスロープを使え、だが一本じゃ足りない。何本もやってグリムを動けなくしろ。後は俺が封印の術を使えばグリムを封印できる」


「……、分かりました」


「頼むぞ。チャンスはグリムの力、グレンの事も考えると1回だ」


「グレンはまだ大丈夫なんですか?」


「力を上手く利用してやるとは言っていたがあまり長くはもたないだろう」


 レイは拳銃を握りしめ覚悟を決める。


「おらおら!そんなんじゃ俺は落とせねえぜ!」


 グレンはグリムの上で奮闘していた。

 触手をヒルダが憑依した弾丸に任せ、彼は素手でグリムの背中を殴る。


 グリムの身体は全体的に岩のように固いため素手で殴れば当然グレンの拳は傷つく、しかしグレンは炎を拳に纏うわけでもなくただひたすらにグリムの背中を殴っていた。


 そしてやがて殴った箇所から煙が出始める。

 グリムもさすがにこの状況はまずいと感じたのか身体を再びひねってグレンを落とそうとする。


 グレンは飛んでグリムの腹に着地して、


「そらよっと!」


 腹に刺さったままだった剣でグリムの腹を切り裂いた。

 そしてもう一度グリムの腹に剣を突き刺そうとした時、グレンは目眩でよろめく。


「うっ、さすがにきついな」


 なんとか踏ん張って剣を突き刺すが浅かった。


「はぁ、後少し……」


「グレン!降りてこい!準備できたぞ!!」


 ブラウンの声を聞いて少し気を取り戻すグレン、そうしてグリムの上から飛び降りて着地した。


「あーきつかった」


「お疲れ。レイ、縛れ!」


 ブラウンが指示を飛ばすとレイは銃口より氷の縄を放つ。


 氷の縄は片方の先は地面に刺さり、もう片方の先はグリムの上を通ってブラウンが地面に書いた魔法陣のようなものの向こう側に刺さる。


 これを瞬時に何本もやり、グリムの長い胴体の一部が魔法陣の上に縛り付けられた。


「先生これで」


「まだだ」


 レイが何本も綱を掛けている間もグリムは抜け出そうと身体の触手で氷の綱を破壊していく。


「………」


 ブラウンは無言でグリムに向けて手をつきだす。


「先生、もうそろそろ魔力が…」


「……………」


 ブラウンはグリムに手をつきだしたまま微動だにしない、いよいよレイの氷の綱を掛けていくペースが落ち始める。


「…………………………、呑み込め」


 ブラウンがそう呟いた次の瞬間魔法陣が光だし、グリムの身体が沈み始めた。


「よし、【サンダーロープ】」


 雷の縄でグリムの身体を逃れなくする。グリムの身体はどんどん魔法陣に吸い込まれ、そして遂にグリムは魔法陣の中に消えていった。


「封印完了」


 それを聞いたグレンとレイは安堵のため息をついて地面に倒れる。


「おい、ここは砂漠だぞ。寝るなら家に着いてからにしろ」


「そうは言うけどもう動けねえよ」


「やれやれ、ん?」


 ブラウンが上を見上げると雨が振りだした。


「雨?」


「ここは元々砂漠じゃないからな。雨は普通に降る」


 雨の中をグレン達はゆっくり歩く。


「魔人……、なあ先生」


「どうした?」


「いや、なんでもない。なんでも……」


 グレンは額から出た角に手をあてながら何やら考え事をしていた。


 こうして砂漠の魔人と予言の3人を巡る戦いの一つが終わった。

 またすぐに別の戦いが幕を開けるだろうが。

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魔法学園 心木真冬 @kokoronoki

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