蛇となりて
ブラウンは地面に着地する直前に魔力を纏って衝撃を和らげた。
「うわー!!ああっ、あー!!」
グレンとレイもブラウンに続いてなんとか着地した。
「先生、一体どうなってるんだ?グリムは……」
塔が微かに揺れている。
「おそらく本当の姿に戻ろうとしているんだ」
「本当の姿って……」
「あいつ自身も言ってたはずだ。あいつは人間じゃないと」
「魔人……、それは何なんですか?」
「魔人は魔を呑み込んだ人、あるいは人の形をした魔。人の形をしたといってもただそれが一番やりやすいからにすぎない。あいつの場合はおそらくあの蜥蜴に一部を埋め込んでいたんだろう。それが戻ったという事は……」
塔の揺れが強くなるに連れてブラウン達のいる地面も揺れだす。
「来るぞ、もう少し離れた方が良いな」
塔が崩壊して瓦礫が上空から降り注ぎ、山を作る。
「グリムは……?」
瓦礫の山が微かに動く、そして瓦礫の山から白き竜の如く太く長い胴体のモノが現れた。
「あれだ」
グレンとレイは驚きのあまり動けなかった、塔と同じあるいは塔以上に巨大な蛇の怪物は空を漂っている。
「こ、こんなのどうやって……」
「あまり呆けてる暇は無いぞ」
ブラウンの言うようにグリムと思わしき蛇はグレン達を確認した次の瞬間、口から太いビームを出してきた。
「雷獣足!!」
ブラウンが素早く二人を抱えてビームから逃れる。
「おいおいおいおい、なんだよあれ!? あんなのとどうやって戦えっていうんだよ!?」
「落ち着け、手が全く無いわけじゃない。取り敢えずはやつの攻撃を避けるぞ」
3方向に別れるブラウン達、グリムはブラウンに向けてビームを放ち、残りの二人には体から太い触手の様な物を出しこれで攻撃する。
グレン達は避けるのに必死で満足に反撃する機会さえない。
「くそ、このままじゃ力尽きる!」
「策はある」
ブラウンがグレンに近づきながら言う。
「策って、こんなやつどうやったって倒せねえよ!」
「倒すんじゃない、封印するんだ」
「封印?」
「ああ、その為にはグレン、お前には囮になってもらうぞ」
「はぁ、まじかよ。まあそれ以外に無いならやるけどよ」
「後どのくらい抑えれる?」
「今でもかなりきついんだよ、だけどこの力を上手く利用する」
「なるほど、踏ん張れよ」
グレンが跳躍してグリムの体の上に乗る。
その体から触手が生えてグレンを襲う。
「さあ、上手く捕まえられるかな?」
グレンは襲いかかってきた触手を捌く、グリムは胴体をひねりグレンを落とそうとするがグレンは飛び回って振り落とされまいとする。
「まずは一撃!」
グリムの腹が足元に来たときにグレンは剣で足元を突き刺す、突き刺した部分からは煙が出てくる。
「このまま……、わっ!!」
剣で足元を切り裂こうとしたがグリムがひねっていた胴体を元に戻す。
「危ねぇ……」
グレンはなんとか剣から手を話してジャンプする事でグリムの上からは振り落とされなかった。
「ええと、武器武器……」
触手が生えてグレンを狙う。
「ちょっと待てって!!」
触手をかわしながらグレンは目当ての物を取り出す。
「確かまだ実弾は入ってなかったな」
実弾を込める。
「よし、もう良いぜ」
触手は次から次にグレンを襲うが、
「炎魔【ファイヤーニードル】」
銃口より炎の刺となった弾丸が放たれる。
「ヒルダ!あの弾に憑依しろ!」
グレンの指示通りヒルダが飛び出し弾丸に憑依する。
そして弾丸は通常ではあり得ない軌道で飛び回り触手を焼いて行った。
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