第1章末まで拝読してのレビューです。
作者が10代の頃にしていた思考実験の集大成と謳われるこの作品。当時のRPG的世界観を現代社会に落とし込みながら、なおかつ神話的要素をも織り込む意欲作です。
科学に軸を置くサイエンスフィクションと、魔法や超自然的な物に軸を置くファンタジーの境界線は、はっきりしているようで曖昧です。
歴史的にはサイエンスファンタジーというジャンル、日本では主に空想科学という名称で呼ばれますが、個人的には物語の核となる部分に理屈付けをするかしないかが、その境界線となると思います。
思考実験の末にRPGの世界観を現代社会に落とし込む事に成功した本作品は、SFと現代ファンタジーの狭間を埋める傑作だと思います。
2部以降の旅路にも注目しています。
まずタイトルの時点から、スケールの違いを叩きつけられました。
それでいて、出だしは「母と子の神楽稽古」という手触りのある記憶。
この個人的体験から神話へのスケールアップを予感させる導入が、とても心地いいんです。
そんな本作は、土・水・火・風の「理」が現代社会に宿ったら?という問いを背骨としています。
この「理素理論」、読者と主人公がしっかり腹落ちするように体験と説明パートが巧みにバランスされています。
設定も非常に整っているので、するすると入ってきます。
(詳しくは本編を見てほしいところですが)例えばライターの炎と「理素の火」の違いを“見せて納得させる”ような場面運びは秀逸です。
RPG的世界観を理論化しつつ、祈り=関係性という切り口で人と自然を結び直す……そんなロマンが通底する本作。
読み始めるとページを送る手が止まらなくなります。
物語はまだ始まったばかり。
あなたも与作と共に、魂の試練の旅路へ踏み出しませんか?