芸予諸島、鞆の浦や尾道にほど近い小さな島「百貫島」。その島には、古い石の塔とともに、凄惨で悲しい伝説が伝えられていました。人の感情とは、いさかいや悲劇を巻き起こすこともあれば、強く気高いものを記憶に刻みつけることもある。そんな故事を無言で語り伝えながら、石塔は海を見つめて立っているのかも知れません。
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精神的な価値を持つ宝刀を失ったことで、思わず声を荒らげたお大尽様。無理難題にも動じない気概ある若者。揺るぎない信念に、お大尽様は家宝よりも大切な尊厳に気付かされたかもしれません。昔の人ほど命の尊さに重みを置きます。お大尽様は利己的な発言から若者の未来を奪ってしまったことに、深く後悔の念を抱いたことでしょう。語り部の口語調で進む物語が親しみやすく、その結末には若者の冥福を祈らずにはいられません。