4月11日

 記録する限りでは、これが最後に飛ばされた異世界であった。以来数年経っているが、もう異世界に飛ばされることはなさそうである。


 目が覚めたら空高くにいた。といっても自由落下しているわけではなく、空に浮かぶ乗り物の上にいた。その乗り物には天井や一部の壁はなくやけに解放的で、今にも振り落とされないかと恐ろしかった。


 視界の端に見えた地上は、現実世界の地面とよく似ていた。しかし、辺りでは地球にないようなものが発達していることからも、ここが異世界であることがわかった。


 辺りを注意しながら巡っていると、目の前に騎士が現れた。いわゆる騎士らしい見た目で、その鎧は青色を基調としていた。背中には羽が生え、首には赤いスカーフを巻いている。


 彼は剣を構え、キリッとした目でこちらを見つめながら口を開いた。

「俺は青空よりもなお高きを目指す者だ。お前は何者だ。」

「俺はさっき目が覚めたらここにいたんです。元は違う世界にいたんですけど、いわゆる異世界に飛ばされるようになって……。これで7回目なんです」

「そうか、お前は困っているんだな。警戒してすまなかった」

「ここは?」

「この世界は『前衛』の世界だ。特にこの惑星では、色々な種族の生き物の存在が忘れられず、魔法と科学が共に研究され、技術として確立されている。」

 どこかで聞いたことがあるような気がする……、そうだ、この地球とよく似た惑星って……!


「あ、あの、この世界って、他の世界と交わったりしたことありませんか?」

「ん?……ああ、そういえばそんなこともあったな。その時は俺と近い時期に現れた奴らが向こうに行ったりもしてたな」

「やっぱり!実は初めて異世界に来た時に出会ったのが、この世界から来たドラゴンだったんです」

「そうか、不思議な縁もあるものだ」

「けど、どうしてこうも色々な世界に飛ばされてきたのかよく分からなくて」

「俺も詳しいことは知らないが、今までの出会いとそれがいつ起きたのかを振り返ってみたりしたら、何か分かったりするかもしれないんじゃないか?」

「なるほど……?」

「まあ俺が手伝えることもそう多くないからな。しかし、生身の人間がいるにはここは危険だろう。そろそろ帰ったほうが良いのではないか?」

「確かにそうですね、ありがとうございます」

「7回目となればもう慣れたものだろう」

 俺は紙切れを受け取った。


「お前の今後の活躍を祈っている」


 目が覚めると自分の部屋に戻っていた。

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蒼の棲家を探せ!異世界日帰り日記 @Tournament_Blue

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