3月6日
記録の順番が前後してしまったが、まあ些細な問題だろう。それもこの日記帳の味といったものである。
ここはどうやら海の家の中のようである。
幸い、人の姿はすぐ見つけることができた。涼し気な服を着た彼女は、パステルカラーの青紫色のような色のロングのツインテールと三つ編みカチューシャが特徴的だった。
「いらっしゃい!見ない顔ね」
「少し迷子になってしまって……」
「ああそうそう、私も大きくなったら立派な芸妓さんになるために修行して……って、ちっがーーーう!誰か舞妓さんだ!!」
ただ聞き間違えただけなんだろうけど、彼女は目を丸くしてツッコんでくれた。初対面なのにノリが良いな。
「舞妓なんて言ってないです!俺が言ったのは『まいご』!」
彼女は顔を赤らめた。俺は咳払いをして話を続けた。
「もともと違う世界にいたはずなんですけど、気づいたこの世界に来ていて」
「どうりで初めて見たと思ったら」
「ここはどこなんですか?」
「難しい質問ね。ここは瀬戸内海に浮かぶ島で、今はちょうど夏休みの時期なんだけど、どうやら今ここは別の世界でもあるみたいなの」
「別の世界?」
「元々この島にいたんだけど、どうやらそことは別の、白黒の世界があるらしくて、そこは色んな軸の世界と繋がってできているらしいの。そして私のこの世界もその一つらしいのよ」
どこかで聞いたことがある話だな。
「実は俺も、これが初めてじゃなくて……。しばらく前から、色々な世界に飛ばされるようになったんです。それと関係があったりするんでしょうか?」
「さあ、それは私には分からないけど……。けど、元の世界に帰すことならできるかも!」
そういうと彼女は紙切れを手渡した。俺はそれを受け取り、目を瞑る。
「良かったらまた夏休みに、今度はこの島そのものに遊びに来てね」
今まで異世界で会った中で一番普通の人間の女の子だったようにも見えたが、その一方で何か裏で大きなものを抱えているような気もして、よくわからなかった。
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