第2話 プログラミングの海へ、そして新たな目標

高校2年生の秋。猫好 恋の部屋は、いつの間にかプログラミングの参考書や専門書、そして無数の付箋で埋め尽くされていた。ゲーム開発に関する基礎知識から3Dモデリングの初歩的な部分まで、彼女は貪欲に知識を吸収していった。


学校の授業が終わると、足早に帰宅し、猫たちに挨拶もそこそこにパソコンに向かうのが彼女の日常となった。の二階の一室が、いつの間にか恋専用の作業スペースと化していた。時には、難しいコードに頭を抱え込み、唸っていると、膝の上やキーボードの横に猫たちが集まってきて、不思議そうに彼女の顔を覗き込む。そんな時、恋は猫たちの柔らかな毛並みに癒され、再び画面に向かう活力を得ていた。


「うーん、このエラーがどうしても解消できない……」


恋が頭を悩ませていると、黒猫のクロがモニターの裏から顔を出し、まるでアドバイスをするかのように「ニャー」と一声鳴いた。


「クロ、何か分かるの?」


もちろん、クロがプログラミングの知識を持っているわけではない。それでも、その一声が恋の凝り固まった思考をほぐしてくれるような気がした。


独学でのプログラミング学習は決して簡単ではなかった。専門用語の壁、理解できないエラーメッセージ、思うように動かないコード……何度も心が折れそうになった。そんな時、恋を支えたのは、やはり猫たちの存在だった。疲れて休憩しようと立ち上がると、必ず誰かが足元に擦り寄ってくる。その温もりを感じるたびに、「こんなところで諦めるわけにはいかない。猫たちのための楽園を作るんだから」と、決意を新たにした。


時には、両親も恋の並々ならぬ頑張りに気づき、応援してくれるようになった。特に、元々コンピューター関係の仕事に就いていた父親は、恋の質問に丁寧に答えてくれたり、参考になる書籍を勧めてくれたりした。母親も、夜食に温かい飲み物を用意してくれたり、長時間画面を見つめる娘の目を心配してブルーライトカットメガネを買ってきてくれたりと、陰ながらサポートしてくれた。


秋が深まり、冬の足音が聞こえ始める頃、恋はプログラミングの基礎的な部分を一通り学び終えたと感じていた。簡単なツールやミニゲームのようなものなら、何とか作れるようになっていた。


「次は、いよいよVRに関する勉強を始めないと……」


VRMMOを作るためには、VR特有の技術や知識が必要となる。ヘッドマウントディスプレイの仕組み、空間オーディオ、コントローラーの操作方法……学ぶことは山のようにあった。


そんな中、恋は一つの情報に目を奪われた。それは、地元の大学に新設された「VRコンテンツ開発学科」に関する記事だった。最新のVR技術を専門的に学べるだけでなく、ゲーム開発の経験豊富な教授陣も揃っているという。


(大学……今まで全く考えてなかったけど、VRMMOを作るためには、最高の選択肢かもしれない)


高校卒業後の進路について、恋は特に具体的なプランを立てていなかった。実家の猫カフェを手伝うのもいいかもしれないと考えていたが、VRMMO制作への思いが強くなった今、大学に進学して専門知識を学ぶことが、夢を叶えるための一番の近道だと感じた。


早速、恋は両親に大学進学について相談した。最初は驚かれたものの、彼女の真剣な思いを聞くうちに、両親も賛成してくれた。


「恋がそこまで本気なら、応援するよ。学費のことは心配しなくていいから、思いっきり勉強してきなさい」


父親の温かい言葉に、恋は涙が溢れるほど嬉しかった。


こうして、猫好 恋の新たな目標が定まった。それは、大学に進学し、VR技術とゲーム開発の専門知識を習得すること。そして、いつか必ず、をこの世に作り出すこと。


彼女の挑戦はまだ始まったばかりだ。プログラミングの海は深く広いが、猫たちの温かい眼差しを胸に、恋は前へと進んでいく。

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