【ねこため】猫好きの猫好きによる猫のためのVRMMO
䨮月飌芲@毎日投稿
第一章:VRMMO開発始動
第1話 始まりの猫と夢の芽生え
2030年、春。猫の毛のような柔らかな陽光が差し込む猫カフェまったり猫日和の窓辺で、猫好 恋はまどろんでいた。高校2年生になったばかりの彼女の膝の上には、白と茶のぶち模様が特徴の短毛猫、ミケが満足げに喉を鳴らしている。その隣では、毛並みの美しいシャム猫のシャム、ふわふわのマンチカンであるモフ、そしてクールな黒猫のクロが、それぞれ思い思いの場所で惰眠を貪っていた。
恋にとって、猫は世界のすべてだった。小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「世界中の猫を幸せにすること」だったし、毎年お年玉はすべて猫関連グッズや猫の餌代に消えていた。実家が猫カフェだったこともあり、彼女の生活は常に猫と共にある。朝は猫の鳴き声で目覚め、学校から帰れば猫たちが玄関で出迎える。宿題をする横には常に猫が寄り添い、眠る時には猫に囲まれて眠る。そんな日常が、恋にとっては至福そのものだった。
その日も、恋は猫たちに囲まれながら、ぼんやりとスマホを眺めていた。SNSのタイムラインには、友人たちが楽しそうにVRゲームをプレイしている様子が流れてくる。剣と魔法の世界、広大な宇宙、異世界のダンジョン……どれもこれも、猫とは無縁の世界だ。
「……猫のゲーム、もっとあればいいのに」
ミケの柔らかい毛並みを撫でながら、恋はふと呟いた。猫を育成するゲームはいくつかあるけれど、どれも彼女が求めるような圧倒的な猫愛を感じさせるものではない。もっと、猫と一緒に冒険したり、猫の視点になって世界を探索したり、あるいは、世界中の猫たちが自由に過ごせるような、そんな場所があったらいいのに。
その時、脳裏に閃光が走った。そうだ、ないなら自分で作ればいい。猫好きの、猫好きによる、猫の楽園を。VRMMOなら、きっとそれが実現できるはずだ。
今までプログラミングなんて全く触れたこともない。ゲーム制作の知識も皆無だ。それでも、恋の心には確かな熱が灯った。それは、猫への限りない愛から生まれた、純粋な情熱だった。
その日の夕食時、恋は家族に宣言した。
「私、VRMMO作る!」
父親は目を丸くし、母親は苦笑いした。猫カフェを営む両親は、恋の突飛な発想には慣れている。しかし、VRMMOとなると話は別だ。
「恋、いきなりどうしたの?ゲームを作るって、そんなに簡単じゃないわよ」
母親が心配そうに問いかける。恋は、ミケを抱き上げ、その柔らかな毛に頬を擦り付けながら、真剣な眼差しで答えた。
「分かってる。でも、本気なの。猫が、猫たちが幸せになれる世界を作りたいの!世界中の猫好きが、心ゆくまで猫と触れ合える場所。そして、地球にいるあらゆる猫の品種はもちろん、ケットシーみたいな架空の猫も、みんな集まる場所にしたい!」
その言葉に、両親は恋の並々ならぬ決意を感じ取った。いつも猫に夢中な娘が、ここまで真剣な眼差しを見せるのは珍しい。
「……本気なんだな、恋」
父親が口を開いた。
「ああ、本気だよ。猫が関係してるものなら、なんだって取り入れる。猫又だって、ベレトだって、猫が好きそうな魚やキャットタワーだって、全部!だから、協力してほしいの」
恋の瞳には、希望と情熱が宿っていた。その日から、彼女の日常は猫と共に、VRMMO制作という新たな目標に向かって回り始めた。まずは、プログラミングの勉強からだ。高校の図書館やインターネット、そして両親の協力も得て、彼女はプログラミングに関するあらゆる情報を貪欲に吸収し始めた。
放課後や休日、友人たちが遊びに出かける中、恋はひたすらコードと向き合った。最初は見慣れない記号の羅列に戸惑ったが、猫のためならどんな苦労もいとわなかった。一つ一つのコマンドを覚え、プログラムが意図した通りに動いた時の喜びは、まるで猫が膝に乗ってくれた時のような温かさがあった。
(よし、まずはプログラミングの基礎をしっかりと身につけること!猫の楽園を作るために、私は絶対に諦めない!)
彼女の心の中には、無数の猫たちが楽しそうに駆け回る、広大なVR世界がすでに描かれていた。それは、一匹の少女が、猫への純粋な愛だけを原動力に、壮大な夢の実現に向けて最初の一歩を踏み出した瞬間だった。
───更新について────
・毎日投稿
・投稿開始日(8月1日)から1ヶ月後(8月31日)は深夜0時と朝7時に投稿します。
・猫の日などの猫やペットに関係する日には12時に特別SSを投稿します。
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