第九風め

『体育祭の風』

_――ほどけた風も、想いがあればまた結び直せる_




Scene:新学期・朝の駅前


→ 夏休みが終わり、秋の風が通学路を吹き始める

→ 駅前のベンチで、つむぎが小さく手を振る

→ はる:「今日も風、涼しいね」

→ つむぎ:「……うん、好きな風」


→ “あたりまえ”になったふたりの朝のルーティン

→ 知らない誰かが見たら、きっと“恋人の風”に見えるはずだった



Scene:教室・体育祭会議


→ 黒板には「応援練習」「係分担表」びっしりの放課後

→ 机を囲むはる・つむぎ・詩織・なぎさ


詩織:「ねぇ、体育祭でミサンガつけない⁉️」

→ はる・つむぎ・なぎさ:「ぷっ……マジ?熱でもある?」

詩織:「ひど!でも夢だったんだよね〜。

彼氏とか友達でおそろいつけるやつ!」

なぎさ:「風灯シリーズ的にはめっちゃ“あり”だけど⁉️」

つむぎ:「材料、まだあると思う。探してみるね」

はる:「……なんか、うちらっぽくていいか」→照れながら笑う


→ 教室の窓がふわっと揺れて、笑いと想いが風になった




Scene:休み時間・ミサンガ制作


→ つむぎと詩織が机いっぱいに糸を広げる

> 詩織:「つむぎ〜教えてよ〜!」

> つむぎ:「うん、簡単だよ」→優しい声


→ 放課後も使って並んで編み続ける

→ つむぎの手元は風のように丁寧

→ 詩織は指が絡まって、不格好な編み目に奮闘


詩織:「無理‼️風鈴に謝るレベル‼️」

なぎさ:「でも“不格好でも詰まってる想い”って好き」

→ 詩織:「……負けない‼️ぜったい編んでやる‼️」



Scene:詩織の挑戦


→ 材料を買い、自室にこもる夜

→ 編み直し、机には糸くずの山

→ つむぎが言ってた「風は誰かのために吹く」って言葉を、何度も思い出していた



Scene:ミサンガ、渡す瞬間


→ つむぎ:「はるくん、できたよ。同じ色にしてみたけど、よかった?」

→ はる:「……嬉しい、すっごく嬉しい‼️」


→ つむぎは風に手を委ねるように、陽の手首にそっとミサンガを結んだ

→ その結び目は、まるで風がふたりをつないだようだった


→ 詩織もカバンからそっとミサンガを取り出す

詩織:「……ごめん。不格好だけど、思いは詰まってるからね」

→ なぎさ、受け取り笑って頭をなでる

なぎさ:「詩織と同じってだけで嬉しいよ。ありがとうな」


→ 教室の空気がふっと揺れて、友情の風が灯った



Scene:係活動とすれ違い


→ 陽は実行委員で忙しく、つむぎとはすれ違い続き

→ つむぎは記録係、隣にいるのは山田くん

→ 自然な笑い合い、風のように流れる会話——だけど陽の姿はそこになかった



Scene:LINEの夜


→ つむぎ、詩織にメッセージを連投


「分かってるけど、寂しい」

「すれ違いばかり……LINEもすれ違い」

「体育祭なんて楽しくない」

「好きになるって、辛いこともあるんだ」

「もう、ホント大嫌い」

「……大好き」


→ すぐに詩織から返信

「スッキリした?じゃあ次は応援する番だよ😊」

「てか、あたしがつむぎ応援するから‼️‼️」


→ 画面越し、つむぎはスマホを見つめながら微笑む


_“応援する”って言葉だけで、風が吹いた気がした。

ありがとうって、言葉も風になるんだね。_


→ 同時刻、詩織は枕に叫ぶ

> 詩織:「この‼️音‼️痴‼️野‼️郎‼️‼️」

→ なぎさ:「風鈴割れるぞ…⁉️」

→ 詩織:「でも恋も友情も応援する‼️‼️風灯同盟だから‼️‼️」



Scene:はる、つむぎのもとへ


→ 校庭の端。片付けをしているつむぎと山田

→ 陽は窓の上からその姿を見つめていた


→ 机の角に「痛っ…‼️」→手首のミサンガがほどけて落ちる

→ はる、拾いながらつぶやく

はる:「……信じてるけど……」


→ 書類に「ごめん」と一筆

→ 向かい風の中、走り出す

→ 風を切って、つむぎの元へ駆けてくる


はる:「つむぎは、俺の彼女だから」→山田へはっきりと告げる

→ つむぎ、びっくりして顔を見上げる

→ 山田は笑って言う


山田:「知ってるけど?てか毎朝つむぎ、はるの話ばっかしてるし」

山田:「お前らホント仲いいよな〜‼️俺も彼女ほしいわ‼️笑」→さわやかに離脱


→ つむぎ:「……はるくん、ミサンガ結んであげる」

→ はる:「うん」


→ ふたり、目を合わせて笑う

→ ほどけかけていた風が、また結び直された



章末モノローグ(つむぎ)


_好きって、近くにいるだけじゃなくて、

ちゃんと言葉にしてくれると、風の温度が変わる。_


_ミサンガも、LINEも、風灯の結び目。

だから何度ほどけても、また結び直していいと思うんだ。_


_体育祭の風は、一度ほどけた想いを、ふたりで結びなおす風になった。_


_今の風は、信じることで生まれた。

そして、それはちゃんと届いた。_



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