第六風め

『記憶の風が、名前になった夜』

_――この夜の風は、たしかに“好き”でできていた_



Scene 1|病室前、風のはじまり


白い廊下。夜の病院。

つむぎは、ドアの前に静かに立っていた。

踊り場の窓の外、街の灯りが風に揺れて遠くへ滲んでいく。


→ ペットボトルの水が小さく揺れる

→ 胸の奥で、風がふきはじめる——“記憶の風”


_はるくんが、わたしの“名前”を好きって言ってくれた夜。_

_その記憶だけを頼りに、いまここに立ってる。_



Scene 2|アルバイト|風と汗の記憶


はる:「親戚の畑、夏めっちゃ忙しいんだ」

→ 夏の農業バイトへ


- つむぎ:「日焼けしちゃう〜」

- 詩織:「若さはノーカウント!」

- なぎさ:「UVカット長袖と帽子、完備」←準備力バツグン


→ 朝露/トマトの香り/湿った土/笑い声

→ 畑の風が、やがてふたりの告白を運ぶ風になっていく



Scene 3|旅路の風|道祖神めぐり


バイト代を手にした陽が一言


はる:「これ……汗のかたちだからな」


→ 車で移動する4人

→ 後部座席、陽とつむぎは言葉を交わさず、少しずつ距離が近づく

→ 山の風/車窓の風鈴/流れていく空気



Scene 4|花火大会|風と名前の本編


駅前・待ち合わせ


→ 浴衣姿のつむぎが、下駄の音と共に現れる

→ 陽が二度見:「……めちゃくちゃ可愛いよ」

→ 風がうなじをかすめ、陽の耳が赤く染まる



屋台とふたりの空気


→ 焼きそば/かき氷/買いすぎる陽

→ つむぎ:「これ誰が食べるの〜?」

→ はる:「俺、今日めっちゃ腹すいてるから」

(ほんとは、つむぎといるだけで満腹だった)



人混みと手の温度


→ 人波に押されて、手が離れる

→ 目が合う/手を取り合う


はる:「離さないから。安心して」

つむぎ:「……うん。ありがとう」


→ 風よりもやさしく、でも風より確かだった“その手の温度”



ベンチ|肩が触れる距離


→ 少し狭いベンチで肩が当たる


はる:「場所、変える?」

つむぎ:「大丈夫。ここなら、綺麗に見えそう」


→ 見上げる花火/横顔/袖が風で舞う


はる(心):

_やっぱ……大好きだな。

カッコいい言葉は言えないけど、この気持ちだけは、ちゃんと届けたい。_



Scene 5|告白の瞬間|風にのせて


→ 夜空が静かに揺れる

→ つむぎの「……はい」の声が、風に乗ったように響く


はる:「俺、つむぎちゃんが好きです」

つむぎ:「……ありがとう。嬉しい。

私も……はるくんが大好きです」


→ 笑ってるふたり/繋いだ手/咲く大輪の花

→ 風が言葉を乗せて、空へ運んでいった



Scene 6|帰り道|ふたりになった風


→ 花火が終わり、ふたりも歩きはじめる

→ でも、歩く道は告白前とは違ってた


> つむぎ:「今までで、いちばん綺麗だった」

はる:「うん、ほんとに」


→ 屋台の匂い/花火の余韻/笑い声

→ それらが全部、風になって背中を押していた


_匂いも色も、ふたつの風がひとつになった夜だった_



Scene 7|後ろ姿に宿る風


→ 街灯の下、繋いだ手はまだ離れない

→ 背中が遠ざかっても、風はそっと残っていた

→ 夏の夜が、名前を呼んでいた



Scene 8|記憶のフラッシュバック|病室前につながる風


_こんな終わり方、嫌だよ。_

_“好き”って言ったばかりなのに。

手を繋いだばかりなのに。_


→ でも、あの夜の記憶が

→ つむぎの胸の奥で、小さく、静かに風を灯している


_その風の音だけが、まだちゃんと残っている。_



Ending Monologue(つむぎ視点)


背中が小さくなっても

風が静かになっても


この夜の“好き”は、まだ手の中に残っていた


_今夜吹いた風の名前は、

きっと、“好き”でできていた。_


_その風が、わたしの名前を運ぶたびに——

“好き”だった夜が、何度でも戻ってくる気がする。_

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