禁忌に咲く
@suzuran0920
光〈牢の中の希望〉
私はずっと、ここにいる。
『いいか?この村のルールだ。』
と大きな人に言われてもらった一枚の紙。少し茶色に染まったボロボロの紙。
いつもらったっけ。どんな顔の人にもらったっけ。
そんな紙に書かれているのは『村の規則』
“仰臥位村の掟”
【第一条】「種族の境界は越えてはならぬ」
異種族間の交わり、特に“子を成す”ことは禁忌とされる。
【第二条】「村外の者を迎え入れてはならぬ」
仰臥位村は“神に選ばれし血”を守る地。外の者は穢れをもたらす。
【第三条】「月夜に産まれし子は神に捧げよ」
特定の満月の夜に生まれた子は“神の代償”として捧げられる。
【第四条】「掟を破りし者は名を奪われる」
【第五条】「神が微笑む地には火を放つな」
【第六条】「咲いた花は摘め」
掟に背いて咲いた花は、咲かぬうちに摘み取れ
これが全貌だ。
そして、私がずっとこんな牢の中にいるのも、このボロボロ中身に理由が書かれている
私はオオカミとキツネの混血だ。
母がキツネ、父がオオカミらしい。
私の両親は私を産んですぐ、この村から逃げていったらしい。
そして取り残された私はここにいる。
3日に一度の食事、日常的な暴力、時間がわからなくなるような、ずっとくらい檻の中。
友達も、遊び道具も何もない
暇で暇で仕方がないが、禁忌を破っているのだからしかたない。
そもそも、こうやって考えている時間が馬鹿らしい。
私の命は、じきに神やら悪魔やらなんやらに捧げられる
そのために今、生きている
外の世界がどうとかは知らないし知ろうとも思わない
もう諦めたから。
寝て起きて殴られて、たまにご飯。そんな日々の繰り返し。繰り返しだと思っていた
ある日、眠っていると足音がした。
この牢のあたりは地面が湿っているからよく聞こえる
いつもの大人じゃない。
じゃあ誰だ。
始めて聞く音に私は好奇心を抱いた
ちゃ、ぴちゃ、と泥の上を一定リズムで歩く音。
もどかしい。早く正体を知りたい。
はやく、はやく。と願えば願うほど時と足音が遅くなる
ゆっくり近づいてきた足音は、やがて、止まる
私はクビに繋がれた大きな鎖を少しだけ動かして音のする方をみる
動いたのは少しなのに“がしゃん”となかなかに豪快な音
「ここにいたのか!」
刹那、聞こえたのは気さくで明るそうな少年の声
誰だ、一体
「こんな夜に来てごめんなー。寝てたのか?」
いやいや、自己紹介くらいしろよと思いながら私は首を縦に振る
こいつは誰だ。ツノが生えてる
この村にあの人たち以外の生き物いたんだ
てかそもそも私と同じくらいのサイズ感のやつ、他にいたんだ。
色々な疑問が頭を駆け巡る
「俺、さくま!」
そういってさくまは人差し指でこう書いた
『咲眞』
「お前は?」
この牢には見合わない気さくな声でそう話す
『に、にちか…太陽の“陽”に花って書いて、陽花(にちか)』
これが、私とさくまの出会いである
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