5.二人は同じ帰り道
「あれ。先輩、今日部活ないんですか?」
「……」
放課後。下駄箱。
ガヤつく中で天熾佑宇に見つかってしまった雀居三上はやや鬱陶しそうに頷いた。
「文芸部もお休みの日あるんですね」
「部長が今日は放課後すぐに氷月先輩の家にゲームしに行くから休みって」
「製菓部は週一の活動なんですよ、でも今日は先輩と帰れたので嬉しいです」
駅への道を男子高校生二人が歩いていく。
「いや天熾さ」
「何ですか先輩」
「お前中学じゃバレー部のエースだったよな」
「はい」
「行かなかったんだ、バレー部」
「お菓子作ってみたかったんです」
あっさりと元エースは過去の栄光を切り捨てた。
「髪も染めてたから最初天熾だって気付けなかったし。結べるほど長くなかったよな」
「高校デビュー、ですかね?」
「何で疑問系なんだ。お前が分かんなかったら誰も分かんないだろ。高校デビューならもっと自信持って言え」
「折角ならカワイイ系で攻めていこうかなと思って」
今の金髪ひとつ結びでピアスも付けている天熾と、かつての黒髪短髪のスポーツマンな彼を結びつけるのはかなり困難だろう。
「元バレー部が今の天熾に会ったら目ぇ飛び出るぞ」
「飛び出させておけばいいんですよ。僕は元々お菓子も結構好きです」
過去の面影はもう一欠片も残っていない天熾があざとく頬を膨らませる。
「うーん……お前の顔の可愛さに免じて路線変更はまだ分かるが」
「先輩なら分かってくれると思ってました。流石親友ですね♡」
「いや親友ではない。勝手に認定しないで欲しい。俺はお前のことただのクラスメイトだと思ってる」
「ご冗談を。一緒に帰ってるんですからもうお友達、でしょう?」
「感性がヤバいのか普通なのかハッキリしてくれ」
赤信号の横断歩道で二人が立ち止まる。今日は春の陽気にふさわしい天気だ。
「そういえば来週自然教室ですね」
「それな。メイク禁止なのまじ? 死ぬんだが」
「同じことを女性陣も言ってましたが先輩もですか」
「え、流石に下地までは持ち込みOKだよな?」
「先輩メイクしてるんですか? あ、意外とがっつりアイライン引いてますね」
「お前この顔が努力無しで出来てると思うなよ。BLになるには俺も相応のイケメンである必要があるだろ」
信号が青に変わる。
「眉整えて美顔ローラーして美容液塗って毎朝一時間かけてメイクしてるからな、舐めるなよ」
「わあすごい」
「何もしてない奴のうっすい感想! くそ! この天然高偏差値顔面がよ! そのツラ貸しやがれフルメイクしてやる」
「いいんですか!? 学校じゃダメですよね先輩のお家と僕の家どっちにします? 僕はいつでも空いてますよ先輩のためならどんな予定でもキャンセルしますわぁいやったぁお家にお邪魔して遊ぶなんて親友そのものじゃないですか嬉しいなあ」
「しまった罠だ」
売り言葉が相手の餌になってしまったことに気付き、逃げる体制に入った三上だったが、改造後輩に腕を掴まれてしまった。
発言には責任が伴うものである。
「いつにします? ねぇ、先輩、今からでも、僕は今からでも全然いいですよ」
「いや……ほら、そうなるとメイク道具一式俺ん家に取りに行かなきゃだし……俺の部屋散らかってるし……」
「今後の参考にするので先輩が指定した道具全部買い揃えます! 今からお化粧品売り場行きましょうほら三駅ほどでデパートですよ」
「高校生の財布を何だと思ってるんだ全部薬局で揃うわ」
「ドラッグストアならそこにありますよ〜!」
「墓穴」
腕を引っ張る天熾を必死で無視しながら駅への道を急ぐ三上。
「先輩ったらつれないですね。今日部活ないからお暇なんでしょう?」
「俺がつれないんじゃない。お前が強引すぎるだけ。今日は大人しく諦めやがれ」
「では逆に。先輩からして僕の適切な距離ってどこなんですか?」
三上はそそくさとICカードを改札に通して、階段を下りながら。
「……まあ。クラスメイト?」
「じゃあまずは先輩に友達って認めさせてやります」
「頑張れー…………いや頑張るな。頼むから」
二人が使う電車の到着アナウンスが流れる。
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