うつくしい死

死んだ蟬　うつくしい死　ベランダの手すりの向こうに散る遠花火

いっこずつなぞる輪郭　美術部の石膏像はなにも言わない

「そのままでいいよ」やさしいキャッチコピー　合成着色料をかぶる

ミンティアのケースがからでからっぽの音が聞こえる貝殻みたい

(やまない雨はない、って人の)その雨はこっちの雨とちがう雨だね

看板の文字がかすれて読めなくてここは地球のパラレルワールド

”survive”英語で書けばそれっぽい　夜から夜へ瞬間移動

かげろうになっても好きだ　もやもやの羽とうめいな羽　わすれない

ひかってる　朝顔のつぼみの渦はきえることばをひらこうとして

わたしの死　こぼれおちてく　まばたきをしたら宇宙に咲く遠花火