6:プロに任せた方がいいよね
「ただいまー。」
「うん? あぁカーチェ。おかえり。」
「あ、パパ。」
大きな欠伸をしながら帰ってみれば、パパのお出迎え。
基本この時間は二人とも外に出ているので、珍しいなと思いながら彼の方を見てみれば、色々な紙を並べ見比べている彼の姿が。書類仕事が嫌いなパパにしてはかなり熱心に読み込んでいたようです。……紙の材質が悪いですし、この村の領主。お貴族様に見せる税金とかの報告書じゃないですね。
それ以外にパパが机に向かうなんて滅多にないですし、何かあったのでしょうか?
「ん? あぁこれかい? ちょっとね。……ところでカーチェ、お昼寝して来たのかい?」
「ううん、お散歩の帰りです。お昼寝はこれから。それとその紙、何か依頼するのですか? 西の方のサッドさんところのお母さんが『盗賊出た!』って言ってましたし。」
「……カーチェは賢いねぇ、ほんと。もう文字が読めるのかい?」
うんと返しパパの言葉に併せながらも、別にその紙の内容見て言ったわけじゃないんだけどなぁ、なんて。
ちなみにこの世界の言語は、日本語ではありませんが、もっと小さいころに暇だったので覚えた形になります。この前も言った気がしますが、ずっとお昼寝してると『あ、これ以上寝れないな』とか『これ以上寝たら気持ちいい睡眠じゃなくなるな』っていうタイミングがあるんです。その合間に眠くなるまでやってたら~、って感じ。
そもそも中世ヨーロッパみたいな農村っていう娯楽が極端に少ない場所なんです。この家に何冊か本があったこともあり、パパもママも読み書きできたのでそこからヒントを貰って、他にやることもないのでパズル感覚でちょいちょいしてたら……、なんか覚えました。
「それで、冒険者さん呼ぶんでしたっけ? あ、パパ。見にくいので乗せてください。」
「はいはい、お膝ね。」
両手を上げ膝に乗せるように要求すれば、笑みを浮かべながら持ち上げてくれる彼。これでようやく、机の上に並べられていた書類がちゃんと見えるようになります。
「猟師の人に調べてきてもらったんだけどね、思ったより沢山の悪い人がやって来てるみたいで、ちょっと大変なことになりそうなんだ。だから近くの町から冒険者の人を呼んで、懲らしめてもらおうと思ってるんだよ。」
「盗賊と内通せず、同時に確実に倒せる上に出来るだけお安く済むような人を探してる、ってわけですね。」
「……わざわざぼかして言ってるのに倍以上の言葉が帰って来るなぁ。」
ちなみにですが、パパママに対して私は殆ど素でお話しています。
別に子供っぽくないからって理由で迫害して来るような人ではありませんし、普段から演技して付き合うのは面倒だししんどいのです。
あと、流石に言えませんけど、殺しの童貞? 処女? はもう済ましちゃったのでその辺り変に気を使わなくても大丈夫ですよ。懲らしめてもらうじゃなくて、ぶっ殺してもらうとか、消し飛ばしてもらうとか。あの埋まった盗賊で繰り返してたらなんか慣れちゃったのでグロテスクもOKです。はい。
「ほんとカーチェは僕たちの子とは思えないほど賢いよねぇ。末は宰相様かな?」
「面倒そうだし、お昼寝もゆっくりも出来なさそうだからヤです。」
「う~ん、相変わらず。」
そんなパパのことばを聞き流しながら、冒険者について書かれた紙を手に取り、眺めていきます。
こういうのですが、基本的にできるだけ高価で評価の良いものを選ぶ方が吉です。
安物買いの銭失いという言葉もあるように、費用をケチって弱い冒険者を呼び、そいつらが盗賊に敗北すれば目も当てられません。と言ってもお金は無限にあるわけではないですし、あればあるほど他のことに使うことが出来るのでその辺りの良いバランスを狙っていく必要があるでしょう。
(主人公君が死んだ粉挽き小屋の事故のことを考えると、再建のためのお金は残しておかないとですしねー。)
正直、こんな頭脳労働は好みではないのですが、この村は将来的に私が受け継ぐ財産の一つです。
荒れれば荒れるほど未来の私のお昼寝タイムが削られますし、村が無くなれば永遠に至福の時間は帰って来ません。それに、ここで求められる所要時間はせいぜい30分程度。ちょっとした我慢で未来の時間が伸びるなら、コレぐらいなんてことないですし、頑張れるんですよねー。
え? 世界救う件? いや今でも全然したくないけど、私以外出来る人がいないから仕方なく……、ね?
「……うん。この人が良いんじゃないかな、パパ。」
「あぁ、えっと……。魔法使いさんかい?」
「そ。1人しかいないチームだしかなり若い人みたいだけど……。たぶんこの資料送って来たギルドさん? のをみる限りかなり優秀な人だと思う。」
私が選んだ人は『魔法使い』の職業に進んだ15歳の少女。
原作開始時期の主人公と同じ年齢で、とても若くて実績もあまりないですが……。この資料を見る限りかなり優秀であることが見て取れます。年齢的に始めたばかりだから熟した数は少ないけど、実力はあるので期待の新人って感じですねぇ。
まったく聞いたことのない名前ですから原作には出てこないモブ、私と同じシナリオに関わってこない人だとは思うのですが……。この依頼料の安さ、若さと実績がないが故の割引セールのような状態。とてもお得ですね。
「盗賊との戦闘経験があって、1人も逃がさずに殲滅。後衛職が1人ってのは確かに不安だけど、これまでずっと1人で依頼を熟してきた人みたいだし……。うん、お買い得じゃないかな? 最終的に決めるのはパパだけど、オススメ。」
「な、なるほど……!」
「んじゃ、私お昼寝してくるね。」
というわけでカーチェちゃんの今日のお手伝い終了!
うんうん、これで気兼ねなくお昼寝できるってもんですねぇ。そのことをパパに伝えながら、その膝から滑るように床へ。寝室に向かって歩いて行きます。
……実は父が見ていた資料の中に、他の多人数の冒険者チーム。私がオススメした魔法使いちゃんよりも手軽で成功率が高くて良さそうなものもあったのですが、そっちは紙束の方に押し込んで隠しておきました。あぁ勿論ですが、彼女の方を選んでも、チームの方を選んでもそう成功率は変わらないと思いますよ? 誤差の範疇です。
(ただチームの方はちゃんとした斥候さんがいたので、“ついて行ったら”バレちゃうんですよねぇ。)
父が取り寄せていた資料は、なんと運が良いことに“王都の冒険者組合”が発行した正式なもの。つまりリストアップされた冒険者たちの所属は王都、仕事が終われば確実にそっちに帰っていくはずです。
ちょうどいい機会でしたし……。戦闘で食べてる人の“やり方”。ついでに王都までの送迎なんかお願いしちゃいましょうかねぇ。
(ま、細かい所はベッドにでも寝転がりながら考えますかぁ。ふぁ~、ねむ。)
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