第2話 異世界転生
目が覚めて、俺は産声を上げた。
この世界に生まれ落ちたという意味でもあると思うし、物理的に産声をあげたという意味でもある。
そうだ。俺の体はいつの間にか赤ん坊になっていた。
手足はまるで食パンのようにぷにぷにしており、手から伝わってくる触角は鈍い。そして何より中世的な部屋の中で俺は今母親と思わしき女の人に抱きかかえられていたのだ。
「はあ、レオちゃんかわいいね。将来は女の子にもてる男の子になるよ? ね? あなたもそう思うでしょ?」
長い髪の毛をポニーテールにしてベルトの多く着いたスカートを身に着けているまだ10代にも20代にも見えるその女性は父親と思わしき男の人からレフィアと呼ばれていた。
レフィア。その名前には聞き覚えがある。
それはとあるゲームで貴族令嬢として登場してとある嫌われ者の貴族の男の子と恋愛結婚していった女の子の名前だ。印象的なサブストーリーだったから鮮明に覚えている。
そのゲームでのグラフィックが今目の前のレフィアの顔とそっくりだった。
「オーフェントもそう思うでしょ? 私たちの子供すっごくかわいいって」
「ああ、そうだな。こんなにかわいい子供が生まれるなんて強くなって君を妻にした甲斐があったよ」
「もうオーフェントったら。……でも私もあなたが夫になってくれてよかった。今とっても幸せよ」
そして、その夫であるはずの男の名前であるオーフェントという名前を聞いて確信する。
ここは俺が元居た世界で大人気だったゲーム「スクリームストップ」の中の世界だ。
そして、ゲームの中でとある理由があり嫌われ者の一族として有名だった刀匠の一族・ハブスタット家の息子として俺は転生したのだった。
おギャア、おギャアと泣き声を上げて母親の注意を逸らす。
「もうレオったらどうしたの? もしかしてお腹すいちゃった? 仕方ないわね」
そう言ってレフィアは服をはだけさせて乳房を取り出す。
あ、初めて見た本物の胸!
一瞬テンションが上がったが俺は赤ちゃんだ。何も反応するはずもない。それに母親相手に反応はしないものだ。
そうか。
俺のこの世界に転生したのか。
そう考えてから前世である日本のことを考えた。
ブラック企業に入ってパワハラ上等の上司にイジメられ泣きながら仕事をしていた毎日。働きすぎてどんどんたまっていく貯金。心配する両親を横目に睡眠不足で出社する毎日。
そんな地獄の日々を三年ほども続けてついに退職するころにはお金が1000万も溜まっていた。
それからゲーム三昧の日々を送り、心配していたはずの親からは次第に「次の職場見つけたら?」と小言を言われる毎日だった。
俺はそんな生活に戻りたいのか?
答えは否だ。
二度とあんな地獄の日々には戻りたくはない。
「あら? この子笑ったわ?」
レフィアが俺の顔を見てとびっきりの笑顔を見せる。つられて父親であるオーフェントも笑った。
その光景を見て俺は確信した。
今度こそ生きていてよかったと思える人生を送る。精一杯生きて彼女を作って強くなって幸せな人生を送る。
ああ、転生してよかった。
幸いこの世界のことは誰よりも熟知しているつもりだ。なぜならばこのゲームで俺は世界一の座をほしいままにしていたのだから。
決めた。
俺はこの世界で最強になる!
そして自由気ままに生きるんだ!
そうと決まれば、俺はこの空間に漂っているはずのとあるエネルギーを感知することに意識を集中させる。
見つけた!
魔力があった。
俺は自分の体の中にある魔力を見つけてそれを少しだけ動かした。今だ体験したことが無い感覚だ。だけど、俺はそれを出来るだけ動かして魔力を操ろうとする。
「あら?」
「どうした、レフィア?」
「この子、魔力を操ってる?」
両親が俺の顔を覗き込んでくる。
それも気にせずに自分の記憶の中にある魔力操作法を使って自分の魔力を動かした。
「やっぱりよ! この子、魔力を操ってるわ!」
「本当だ! 将来有望だな! この子は将来とんでもない天才になるかもしれないぞ?」
「そうね! もしかしたら将来は八聖騎士になるかもしれないわ!」
そうやって、俺はこの世界での始まりの一歩を体験していた。
そうだ。
俺はゲームの原作知識を使って無双するんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます