肉を焼く
白川津 中々
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腹が減った。
日曜の朝、昨晩の酒が少し残っている状態。シメを食わずに寝てしまったものだから胃が軽い。頭も体も重いが欲望が勝ち、着替えてスーパーへ。とりあえず肉をカゴに入れる。100グラム152円の豚肉である。ついでに1000円程度のウィスキーも一瓶買って帰宅。早速フライパンに油を敷き着火。肉を乗せて焼き、ウィスキーをかけフランベ。瞬間、上がった火柱が引火し辺り一面火の海となった。しくじったなぁと思いながら炎に飲まれていく。これが死か。思いの外容易に受け入れられるものだ。
ところで死ぬ前でも腹は減るし酒は煽りたいもので、湧き上がる欲望に従い肉と酒を胃に入れていく。体の内外から燃えていくが、それが快い。肌が焦げ、内臓が爛れていくのを感じながら肉を楽しむ。
あぁ、俺は死ぬのだ。死ぬのにどうして貪る必要がある。この豚肉のように、誰かの血肉になるわけでもないのに、命がカロリーを求めている。名もなき豚よ、ロースになった命よ、申し訳ない。俺はお前を食っているが、焼死する。お前も俺も犬死にだ。しかし、しかし。
「美味い」
灼熱の苦痛も煙の毒も、全て忘れるくらいに、肉は美味かった。悔いはない。ないが、強いてあげれば、もっと上等なウィスキーを買えばよかったと思う。もしラフロイグあたりを飲んでいれば、俺の焼肉も芳しく食欲をそそっただろう。誰に食われる事も、ないのだろうが。
肉を焼く 白川津 中々 @taka1212384
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