サンタクロースになりたい君へ
@demeria
きっかけ
「もうあなたにしか相談できません。小さい頃は毎年手紙を出したのに、この頃差し上げなかったご無礼はどうかお許しになって、私のつまらない話を聞いてください。
いつからか私は、劣等感に苛まれるようになりました。詳しく説明すると、ずいぶん長くなります。私にも、実は自分の気持ちが、はっきりとまとまっていないのです。原因と思われることはいろいろあります。
私には、もう何もできません。成し遂げられる気がしないのです。今までの人生で培った自信は、そのうち、日に日になくなっていきました。
小さい頃書いたお手紙を読んでくださったでしょうか。覚えておいででしょうか。私は、ひとえに誰かの役にたちたいと、それだけ望んでいました。誰かを助けたい。誰かを救いたい。でももうできません。"できない"と決めつけて思うことは、甘えです。逃げです。自分でもそう思います。しかし、できる気がしなくなりました。本当に、これから先、人の役に立てると思えないのです。
今でも、思い出す出来事があります。中学のとき、それもかなり私が落ち込んでいたようなときに、ある数学の先生が、ふとした会話の拍子にとても自然に私に言ってくれたことがあったのです。
「あなたの真面目さにいつも僕も救われていますから。」
悩み相談をしたわけでもなく、そんなことを言うタイミングとは思わなかったときに、いたって自然に、当たり前のことのように、そう言ってもらえて私は救われました。だから、一生懸命真面目にやろうと思って、そうしていました。
でも今は違う。もう、私は真面目に一生懸命やるということができなくなりました。私は、先生が思ったような人間ではなかったのです。もう、誰のことも救うことはできないだろうと思います。それが苦しい。これからどうやって生きていけばいいのでしょうか。そもそも、生きていく意味はあるのでしょうか。自分自身に、期待し、憧れていた大人にはなれそうもありません。私はどうせそういう人間なんだ、と諦めている自分がどこかにいます。それはどうしようもなく悲しいことです。さびしいことです。自分自身の心からさえ、見放され、嘲笑と侮蔑を含んだ同情の視線を投げられる、そんな自分自身なのです。
私は、生きていていいですか?
小さい頃はクリスマスが好きでした。それはそれはとても幸せなときだからです。みんなもそうだったんじゃないでしょうか。しかし高校生にもなると誰の目にも、クリスマスはただのイベントみたいです。それまでに無理やりにでも彼氏をつくってデートしたい、そんな話ばっかり聞きます。いいなあ恋人がいて、と、羨んでいる言葉も多く聞きます。私は、キリスト教信者でもないし、そんなに厳粛な気持ちでクリスマスを待っているわけではないですが、けれどクリスマスってそんな浅いイベントだったでしょうか。教室にいるとひとりひとりの自意識に押し潰されそうで、そんなことがそんなに重要なことだろうかと思う。
でも私だってもう、サンタさんなんて信じる歳はとっくに過ぎています。正直、こんな手紙を読んでくれるとは思っていません。いるとも信じられません。ごめんなさい。手紙を書いたのは、ただ、打ち明ける相手がもう、他に思いつけなかったからです。読んでくれなくてももともと、と思っているんです。私はどうしたらいいか、分からなくなっているんです。きっと、子どものことを大切に思っていらっしゃるあなたなら、聞いてくれるかもしれないと、考えてしまいました。
グダグダと、甘ったれた言い訳を、書いてすみません。本当にすみません。ただ単に自信がないってだけの話じゃないの、分かってください。
もし、本当にサンタさんがいるなら、私を助けに来てください。もう、生きたくないんです。」
冬のある一通の手紙が、全てのきっかけでした。
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