別れと出会い
「魔人だと……」
岩陰から出てきた、人を見て、ジャックがそう漏らす。
「攻撃が止まった、急げ!」
攻撃が止まったその隙に、俺たちはユウのいるところまで、走る。
「あっぶな!」
俺は、なんとか攻撃を受けずに済んだ安心感に叫ぶ。
「ねえ、ライト知ってる?」
「なんだよこんな時に」
こんな時にもかかわらずユウは俺に、能天気にでもいつもよりは切羽詰まった様子で話しかける。
「この洞窟に眠る剣の話し」
「剣?」
「そっ!魔剣、生命が宿ってるってやつ」
「マジかよ、でも、今はそれどころじゃねぇ」
凄い情報に、驚くが、今はそれどころじゃない。
心臓が耳元にあるんじゃねえかってくらい、うるさい、足が笑っている。
「ルーラ、走って援軍を呼んできてくれ」
ジャックがこちらにだけ聞こえるように呟いた。
「でも、私が行ったら……」
「大丈夫だ、いいから行け」
ルーラは、入り口に向かって走る。
「おや、援軍を呼ぶおつもりですかね、まあ、いいでしょ、それまで遊びましょうか」
魔人は、意外にも、簡単にルーラを逃がしてくれる。
「ライト、ユウ、援軍来るまで耐えるぞ」
ジャックの言葉で、俺たちは、敵へと突っ込むが――
攻撃が通らない。
「うわッ!!!」
次の瞬間、壁へと吹き飛ばされる、一瞬すぎて何が起こったのかわからない、魔法?意識が朦朧とする。
俺、ここで死ぬのか?
『いいのか?』
何処からかわからないが、声が聞こえる。誰だ?
『ここで死んでも、いいのか?』
死んでもいいのかって?そんなの……いいわけねぇだろ!
『だったら俺を使え、助けてやる」
誰の声かなんてわかんない、でも、今はそんな事どうだってよかった。
無我夢中で、剣を手に握る。
◇◇◇
――ユウ
「あまり面白くありませんし、そろそろ、終わりにしましょうか」
ライトは壁へ吹き飛ばされ石の下敷きになってから、返ってこない、ジャックは先程から、死なない程度に殴られ続けている。
このままいけば、ジャックは確実に殺される。
ギルドから、ここまでの距離的にはそろそろ援軍が来てもおかしくはないはず、私の為にも、ジャックにはもう少し頑張ってもらいたい。
このままジャックに夢中になっていてくれれば、吹き飛ばされ、瓦礫の下敷きになっている、私の方に来ることはない。
私さえ生きていれば、問題ない――
「まあ、そこに倒れてる人たちよりは、楽しめましたよ」
「勝手に終わらせてんじゃねえよ!」
魔人がジャックにとどめを刺そうとした瞬間、急に聞こえたその声とともに、魔人へ、ライトが斬り込む。
先程まで、傷一つつかなかった魔人の身体に傷がつく。
「魔剣ですか……」
ライトの手に握られていたのは、先程話した生命が宿る剣、魔剣だ。
「誰も、殺させねぇ」
少しは協力しなくては、ライトが死ぬ。
ライトはまだ使える――
「ライト!」
私は、剣で魔人に斬りかかる、当然普通の剣では傷一つつかない。
「ユウ!よかった無事だったか!」
「当然!」
ライトと協力し、ジャックから引き離しつつ、戦う。
「魔剣とは、やっかいですね」
魔剣が出てきたのは想定外なのか、魔人が少しうろたえた、その瞬間――
「援軍呼んできたよ!」
援軍を呼びに行った、ルーラが戻ってくる。
流石の魔人も、魔剣とこの人数相手に戦うのは、嫌なようだ。
表情を歪ませ、後へ下がる。
「十分楽しめましたし、今日はもう、帰ることにしましょうかね」
魔人は黒い霧になって消えていく。
なんとかギルドへ戻ることが出来た私たちは、治癒魔法師による治療を受けていた。
「ユウ?どっか行くの?」
部屋を出ていく私に、ライトが話しかける。
「ライト、女性にどこに行くのか聞くのは良くないと思うよ〜」
私の言葉に、ライトは顔を赤くして、何か叫んでいた。
――――
洞窟近くの廃墟――
「おや、お客様でしょうかね?」
目の前にいるのは、さっき戦ったばかりの魔人。
私の頭の中で、人間の叫び声が響く。悲惨な映像が流れる。
「聞きたい事がある、腕に羽の模様を入れた男を知らない?」
「……はて、そんな男知りませんが?」
「そう、知らないか……」
魔族の口を手で掴み、上に上げる。
「な、に……う、ごけ…」
「じゃあ、もう、ようはない」
私は躊躇なく、魔族の男を握り潰す。
グシャッと嫌な音をたてながら、地面へと落ちる。
知らない?何が知らないだ……
答えないのなら、もう用はない。
――
あの出来事から、数日が経過していた。
「俺たち結婚する事になったんだ」
唐突に伝えられた、ジャックとルーラの言葉に、ライトは口を開け驚いている。
「え!マジで!?」
「驚きすぎでしょ」
「ユウは驚かないのかよ!」
「知らなかったの、ライトくらいでしょ」
ライトは本当に気づいてなかったようで、質問攻めだ。わかりやすかったと思うが、あんだけ一緒にいて気づかないというのも、ある意味凄い。
「それで、実はな……」
ジャックは私とライトの目を見ながら、少し申し訳なさそうに、話し出す。
「冒険者、辞めようと思う」
「ごめんね二人とも……」
「え……」
ジャックとルーラの言葉に、隣から漏れた声が聞こえた。
「なんで……ッそうっすよね、俺二人のこれからを応援してます!」
ライトは本当に言おうとした言葉を飲み込み、ヘラっと笑う。
いつもの居酒屋でお別れ会をした、その日の夜。
ライトと二人で並んで座り、草原で星を見ていた。
ここは光が少ないから、星が綺麗に見える。
「なあ、お前は辞めないよな?」
隣に座っていた、ライトが小さく呟く。
「なに?もしかして、私のこと好きなの?」
少しからかうように、喋る。
「ちげえーよ!はあ、なんか、もういいや」
ライトは後ろに寝転がり、星を眺めている。
「辞めないよ……」
小さく呟く。
辞めるわけにはいかない……その時が来るまでは……
「そっか」
ライトはぶっきらぼうに答えたが、どこか嬉しそうだった。
次の日。
「ライトさん、ユウさん!」
二人で依頼掲示板を見ながら話していると、受け付けの人から声をかけられた。
「どうかしたんすか?」
「彼と一緒に、依頼に行ってもらえないでしょうか?」
「よろしくお願いします、ナオト・タカハシです」
ナオト・タカハシから、見えたのは、忘れかけていた、なんとも懐かしい様な、記憶だった――
異世界召喚されたので、能天気な冒険者をやっています〜復讐を果たすその時まで〜 大和由愛 @raiyu
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