第4話

今は秋だ


結局あたしは保健室に通っていた

『どうするの?』

羽坂先生が真面目な顔で聞いてくる


『………。』

黙っていた  ただ沈黙

『………。』

つられて沈黙


あたしは中学三年生なのに 一瞬 進路を聞かれたと思わなかった 


羽坂先生は先生だ


でも本気で心配しているようだった  


      あたしの進路


そうだよね?羽坂先生は先生なんだ 生徒の進路は気にするよね?でも何『好き』とか言っといて進路のこと心配しているの?あたしが好きなんでしょ?じゃあなんで何もしてこないの?何あたしエロマンガの見すぎかな?こんな真面目な国でそんなエロマンガみたいな展開になるわけない…わかってるよ

わかってる充分わかってる



『…?』

羽坂先生は何も言わないあたしのことを…あたしの言葉を待っていた

意味がわからないと思いながら



あたしはほぼ保健室にいたけど 成績はめっちゃいいのだ 進路なんてどこの学校だって高望みさえしなければ行けるのだ

でもこの中学にしか羽坂健太はいないのだ…

つまりお別れとなる



そうどんなに勉強しても羽坂先生のいる学校に受けるわけない 今 現在あたしが通っている中学校の保健の先生なんだから



『先生』とあたしが羽坂先生を呼ぶ



『先生は本当にあたしが好きですか』




即答して欲しかった『好き』だと

でも羽坂先生は何も言わないし



『いつもとなんだか雰囲気が違うのはどうしたの?』第三者の声がした




佐藤だった


すぐに気づかなかった たぶん羽坂先生もそうだったんだろうと思った でも気づいてたみたいだった


だから『好きだ』と即答しなかったのだが

あの時のあたしは気づかなかった

人間の雰囲気じゃないというか 気配すら感じなかった…佐藤のこと



なんだか いつもの佐藤と別人のようにさえ思えるが履いている上履きがいつも佐藤が履いているものだった【3年2組佐藤】と書いてある



『あなたはボクが好きなんでしょう?』



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