キメラゴブリンを斬り伏せる大金槌《クラッシャーハンマー》――③

「【竜のつめキバ】を持った【キメラゴブリン】。なかなか、難しい依頼が来たねー」


 腰の羽をぴょこぴょこと動かしながら、モニカは武器の図面を引いていた。


 ボクは対面の席から、折に触れて口を挟みながら、表情をしぶめた。


「【竜の爪と牙】……ゴブリンの素体に、混じっているのがそれだけならいいんだけど……」


兄貴アニキは……それだけじゃないと思ってる?」


討伐者セイバーが、それほど手酷てひど退しりぞけられたというのが、どうにも……に落ちないんだ。だから、ボディーに【竜の銀灰】が混じっていると仮定して、話を進めたい。【竜の銀灰】――うろこ鱗粉りんぷんは竜の剛毛が変化したものだから、それが混じっているとなれば防御力は格段に上がっているはずだ」


「そっか、なら、その防御を打ち崩し――また、前提ぜんていの予想が外れた場合であっても問題なく、最効率の効果を発揮する武器は――……」


 モニカの目の色が変わり、図面にかかりきりになる。

 ボクの進言だけに耳を貸して、あとはフツフツと引っ切り無しに小さく呟きながら、ペンを走らせ続けた――。



「――――出来たッ!!」



 そうして、図面を高々と掲げて意気良いきよい声を発すると、用紙をボクのほうへ向けて寄こした。


「――どう? 創作意欲は湧きそう??」


 モニカの問い掛けに。


「――最高に」


 ボクは本心から答えて、椅子から腰を浮かせて立ち上がった。


 ――さあ、ボクの時間だ。


 ――さあ、火の前に立つ時間だ。


 熱よ、この鋼に宿りますようにと――金槌を幾数回いくすうかいと振り降ろしながら、幾数回いくすうかいの一つ一つに願う、のように熱を持つ鍛冶師かじしの時間だ。



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