パズル的パラレルワールド
@ao__k__ao
第1話
愛を拒絶するとか、愛を知らないとか、でもどうしてそうなったのかなんて説明ができない。魚が生まれつき陸で生きられないように、あるいは、人間が水中で生きられないように、それは必然であり、なんでそうなった、過去に何があったかなんて、そんな国語の試験のようなものはなく、ただ、僕らはそういう風に生まれたんだ。
僕は愛というか、相手から強い好意を向けられるのが苦手なんだ。拒絶してしまうんだ。だから、人間に対して全く恋愛感情や好意や、抱かない彼女に惹かれたんだ。パズルのピースがあった気がした。「そういう」性質に名前があるのは知っているけれど僕らは見て見ぬふりをしている。ラベリングされるのは好きではなかったから。好きになるのに好かれるのは嫌だ、なんてのは「クズ」の他にならないと自覚しているけれど、自分の気持ちをごまかせない。そしてそのせいで僕は彼女に出会う前に多くの、人を、傷つけてきた。だから彼女にないものが僕には心地よかった。だって、好かれることがないのだから。僕は好きでいてもいいんだ。彼女の世界にないものは僕の世界にとって安心感を与える。彼女が投げたボールは確かに僕の元に来るのだけど、それは世界線が違うので触れようにも触れられず、そこが、とても、よかったんだ。
セミダブルのベッドで手なんか繋いでみる。「眠れないの?」と彼女は僕の方を向いて「ふふ」と笑った、七月の夜。あぁ、好きだな、と思う。月夜に照らされる横顔とパジャマの彼女を僕はぼんやり眺めて、体を寄せる。「好き、なんて言うとさ、安っぽいけど、好きなんだよ」と僕は言う、深夜二時。強めの冷房は愛だ。だってくっつく口実になるから。「ねぇ」と僕は彼女の手を少しだけ強く、布団の中で。「どうしたの?」と言う彼女の声に愛も恋もなく、でも拒絶もない。「ないの?」と意味深に聞くけどちゃんとわかってくれる君は「ないね、概念自体」と優しく教えてくれる。僕は「よかった」と思って、そっと彼女を抱き寄せる。小さな膨らみが僕の胸に当たる。呼吸のリズムは一定で、スー、スー、と寝息を立てるようなリズムで、僕はこのまま一緒に死んで溶けたいとすら思った。「君はさ」と君が言った。「私のことが好きなんでしょ?」「うん、とっても」一瞬の間のあと「ごめんね」と小さく僕の胸の中に顔をうずめて言った。「どうして」と聞くと「私には、ないから、君を好きになったり、愛したりすることは一生ないんだよ、それでもいいの?」と枯れるような声で。なんでそんなこと言うのだろう。いつもは言わないことでも、思わないであろうことでも、夜は人を弱くしてしまう。僕は彼女の「それ」が好きなのに。そういうと「知ってるけどさ、あおくんが、あおくんがさ」可哀想と言う言葉を飲み込んだのがわかった。そういう優しさがあるんだ、君は。僕は「ないものがいいんだよ、だって、ふゆにそういうのがあったら安心して好きになれないから、自惚れかもしれないけどさ」と僕は頭にそっと口付けをした。
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