プロローグ
世界は、魔女を恐れていた。
世界は多くの災害に見舞われていた。
それは人々から安寧を奪い、恐怖を与えた。
誰かが言い出した。これは魔女のせいだと。行き場を失っていた人々の増悪は魔女へと向けられるようになっていった。
二百年前、英雄と呼ばれた魔法使いマーリンは悪魔の侵攻を退け、世界に安寧を与えた。奇跡のような力を振るい、時には人を癒し、時には天地を揺るがすほどの魔法を振るい悪魔を退けた。
時が経ち伝説となった彼女の残した功績は忘れ去られ、その力のみが恐怖と共に語り継がれていた。
月日は流れ彼女のような魔法使いは世界に現れなくなった。
そして魔法は次第に失われていった。
技術としての魔法は後退し、魔法を扱える者はほとんどいなくなった。
そうして人々は、魔法を学ぶ術を失い、魔法を「知らないもの」として恐れるようになった。
人々は探している。世界を恐怖へと陥れた魔女を――。
人々は探している。かの大魔法使いと同じ姿で白髪と青い瞳を持つ者を――。
人々は探している。混乱に満ちた世界へ安寧を与えてくれる存在を――。
世界は今日も存在のしない罪を魔女に着せ、恐怖と怨念を過熟させていく。
雪冤の魔女 雨翠 潤 @usuijunnovel
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