とても恐ろしく、考えさせられる作品でした。世の中から「悪いことば」を消し去り、「いいことば」だけにすれば、果たして「いいせかい」が出来上がるのだろうか。
その言葉が消されてもその現象がなくなるわけではない。巧みに言い回しを変えて存在し続けるだけだが、その現象すら「いいことば」でくるめられてしまう。読み進めるうちに喉を締められるような息苦しさを覚えてくる。
「焚書」という言葉からは暗黒の歴史を思い浮かべます。でも果たして現代に生きる私たちにとって過去の言葉だろうか。今まさに言葉狩りが強制的に、あるいは忖度のもとに行われている最中ではないか。
この作品は決してフィクションに留まらない不気味さをもって読み手に迫ってきます。