第24話 踏切 8


「そうなん。実はおとついお爺ちゃんのお見舞いに病院へ寄ったんだけど、

病院から踏切のとこまでぼく、自分の意識がなくなっていて、

もう少しで特急の電車にひかれるとこだった」


途方に暮れ落ちこんでいる。涙がわきあがってきて、腫れた目からひと粒あふれでた。頬にこぼれ落ちる。


「ショックで、それからずっと辛くて」

ポツリ、ポツリ、話はじめた。


「誰にもこんな変なこといえんし」

糸口がみえてきた。

「でも踏切の手前で気がついて、死ぬ一歩手前で助かった」


啓はそっと純の背中をさすりつづけた。表情をうかがい、純の目をのぞきこんだ。

「でも助かっているじゃない。それはなんでだと思う」

「どうしてだかわからない。


いっぱい考えたけど、ぼくは死ななきゃいけないほど悪いこともしてないし、どうしてこんなことになったのか、さっぱりわからんのんよ」

話の筋道がはっきりしてきた。


「純はもしかして、なんか良いことに気がついてるんじゃないん」

「あのね《事故でけがをする人》と《死んでしまう人》《無傷でいられる人》

《事故にさえあわない人》この運命といわれている運の差はどこにあるのだろう」


「すごいことに気がついたね」

「悪いことをしていないから、死なずに命が助けられたのかなって思う」

「確かにそうだよ。それはそのとおりだと思う」


「だけど《事故にさえあわない人》ではなかった」

「そうだね。でもそれはかなりハードルが高いと思うよ」


啓と長い間話しあった。純の心がしだいに落ちついてきた。

冷静に自分の心をみつめられるようになった。

『どうすれば《事故にさえあわない人》になれるのだろう』


自分のあやまちはどこにあったのか、ぜひ解(と)きたいと思った。

今までの自分の行いや、考えを振りかえりはじめる。

『なにがいけなかったのだろう』


啓がいっていたように

『僕の中のある強い感情の波動が悪霊と共鳴したから、

生贄(いけにえ)に選ばれてしまった』

のかもしれない。


『啓はオーラといっていたけれどぼくにはオーラがみえない。

だから心の持ち方なんだろうか』

などと思った。

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