空想語源〜負けず嫌いと呼ばれた男〜
コウノトリ🐣
負けず嫌い
ありとあらゆる言葉が生まれ、変質する町、語源町。その町に住む
そんな彼を周りの訓練生は揶揄して呼ぶ。負けるのを恐れて練習試合にさえ挑めない生粋の臆病者、負けず嫌いであると。
どれだけ揶揄われようと賢男はどうでも良かった。周りの訓練生は真面目な
「おい、負けず嫌い。そんなに負けるのが怖いか」
「
「へっ! 練習試合もしない負けず嫌いに言われずともやるわ」
其方らのようなものにかける時間などない。木刀を振り回して打ち合い始めた同輩を尻目に
「
練習試合で同輩らが振る木刀と比べて
――――
日清戦争が終わったのは
それ故に気に入らない。木刀を振る姿勢が綺麗だと先輩から褒められていた同輩がいる。やつは臆病者の練習試合から逃げる負けず嫌いなのに。
「おい、負けず嫌い。そんなに負けるのが怖いか」
「
やつは本当に負けず嫌いで
「負けず嫌い! お前のような者は
「其方らに手前のことを言う権限はない。越権行為にあたるぞ」
「口ばっかり達者なやつめ。お前のような負けず嫌いは非国民の家族の元で蹲っておけ!」
「貴様! 誰の親が非国民だと」
「そうであろう。お前のような、日本軍人の節度を乱す臆病者を育てたのだ。天皇陛下の役に立てぬ男子を育む家族はお前と同様に非国民だ」
「貴様、言った言葉は飲み込めぬぞ」
やつはここまで言ってようやく木刀を抜いた。
やつの剣はあまりに素直で立ち姿と実力がチグハグであった。
――――
こういう時、小説やアニメなら彼は勝てたのであろう。ただ、これは現実。実践経験の欠如した訓練生と基礎で負けているものの、実践経験で圧倒的な差を持つ訓練生の勝負がそこにあった。
冷静になれば良い。それだけで
――木刀が当たるのは
夜柳は何度打たれて血を流そうとも立ち向かってくる負けず嫌いに慄くと同時にこれこそが日本軍人であると感じる。木刀は決して柔な武器ではない。打たれると痛いし、時には身を裂く。
勇猛果敢、矜持がために挑む菖蒲の姿はまさに侍であろう。夜柳は菖蒲が元の負けず嫌いに戻らないように徹底的に第三者が止めるまで打ち負かした。
――――事後――――
菖蒲は夜柳に打ち負かされてからというもの、菖蒲は夜柳に試合を挑み続けた。全ては家族を冒涜した夜柳に謝罪させ、
「おいおい、また負けず嫌いのやつ夜柳に試合っているぞ」
「ああ、アイツは負けず嫌いだかなね」
菖蒲につけられたあだ名”負けず嫌い”だけが残り、彼の姿を見た人々は理解する。競争心が強く、負けることを極端に嫌う。あの姿が負けず嫌いなんだと。負けを認めず修練する姿を見て人々はそう悟った。
もう誰も負けを恐れて臆病な者に対して”負けず嫌い”なんて言いはしない。負けず嫌いは菖蒲のように競争心が強く、負けることを極端に嫌う性格の者のことを言うのだから。
本来の語源
「負けず嫌い」は「負け嫌い」に否定の「ず」が加わったものと考えられています。明治時代以降に生まれた比較的新しい言葉で、「食わず嫌い」など他の表現と混同されて広まった説、また、「負けず嫌い」の「ず」は、打ち消しの意味ではなく、強調や意志を表すために使われたという説もあります。
空想語源〜負けず嫌いと呼ばれた男〜 コウノトリ🐣 @hishutoria
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