完結されたということで、一気読みしました。
本作は、仲間を庇って怪我を負ったにもかかわらず、パーティに見捨てられてしまった主人公ネモが、「ダンジョンボス募集中」のチラシを見て転職するところからはじまるファンタジーです。
追放系主人公、ダンジョンなどのキャッチーな要素をうまく料理しつつ、テンプレで終わらない魅力があります。
序盤は失意の中でヒロインのルナリスと出会い、一念発起。ダンジョンボスになるべく魔王城で就職面接。現実の就活みたいなやり取りに意表を突かれました。
ルナリスとコンビでダンジョンボスになってからは、限られたリソースを使ってどのように魅力的なダンジョンを作るか、創意工夫の過程がまた楽しい。クラフトゲームみたいでワクワクしました。サポートAIみたいなダンジョンの人格、ララとの交流にもほっこり。しかしダンジョンボスとして順調に成果を積み上げていた二人の前に、大きな困難が降りかかります。
中盤からは、失ったものを取り戻すための旅が始まります。新しい仲間、粗野で口は悪いけれど、熱い想いを胸に秘めた有瘤族の職人レンゾー、寡黙で誤解されやすいけれど、心優しく純粋な有殻族の採聴士ボルネとの出会いと冒険は、児童書のような読み口で癒されました。
多くのキャラクターに共通するのは、挫折を経験していること。
仲間に見捨てられた主人公ネモは言うに及ばず、ルナリスも、ままならない現実にぶち当たり、苦い経験をしてきています。
彼らは何度も困難に見舞われ、何度も立ち上がり、少しずつ、前に進んでいきます。
苦悩しながら成長していくキャラクターが、本作の一押しポイントです。
加えて、読みやすい文体、作り込まれた設定や、個性的な街の描写はテーマパークを巡るような楽しさがあります。
読むと元気になれるこのダンジョン、少し寄って行かれませんか?