第27話 後味

「今日はありがとうございましたー!」

 きつね前で解散し、私はひかると改札の方へ歩いていく。

 清水さんと霜越さんは、用事を済ませるとかで、私たちを見送ってくれた。

「また善さんに会いたいね」

 ひかるは参考書が入った本屋の袋を手にしながら、嬉しそうにしている。

 私は、ひかるが今日この時間を楽しんでくれたことが嬉しい。

 けれど、「そうだね」とは、言えなかった。

「あ、もりーは清水さん狙いやから、善さんには興味ないか!」

「んー、ちょっとタイプが違くない?」

 あははとひかるは納得したように笑う。

「ほんまそれ!」

 ひかるがしゃべって、私が相槌をうつ。

 いつものように、それまでのように。

 私は今までの行動をなぞる。

 どれだけ繕えていたかは分からない。

 ただ、なにも聞かないひかるが友達でよかったと思う。

 私はひかると駅で別れ、足早に駐輪場へ向かった。

 スタンドを跳ね上げ、今日のことを思い返す。

 ――あの人は、気付いていた。

 私の汚い感情に。

 もう私は行動すべきじゃない。清水さんに対してなんらかの行動をとるべきじゃない。

 感情をぐっとこらえて、ペダルをこぐ。

 冷静になれ。

 いいなあと勝手に思うことは自由だけれど、行動に移しちゃいけない。

 だから心の中でだけ、あなたを思うことは許して。




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