地獄へ行こうよ

六散人

 

私の名前は亜弥。高校一年生。

ハッキリ言って、人生つまんない。

飽き飽きしてる。

まだ16なのにさあ。


最近何をしても、前程面白みを感じないし、テンションも上がらない。

友達も似たような奴らで、何の刺激も感じない。


最近の唯一の楽しみと言えば、亜矢をイジメることくらいかな。

私と名前が一字違いの鬱陶しい奴。

うじうじしてて、不細工で、性格暗くて、どんくさくて。

それで私と名前が一字違いなんて、マジありえねえ。


でも亜矢にはちょうどいい役割がある。

つまり私の鬱憤晴らしになること。

それ以外こいつに生きてる価値はない。


だからとことんやってやる。

例えこいつが自殺しても、世の中に何の影響もない。

まあ、そういう意味では私も同じなんだけどね。


それだけに余計ムカつくのよ。

こいつと私が同じだって?

あり得ねえわ。


だから徹底的にやってやった。

毎日顔見たら、挨拶代わりに蹴り入れてやったし。

掃除道具入れに閉じ込めてやったし。

トイレの便器の水も飲ませたし、階段から蹴落としてやった。


でも亜矢の奴、何にも言わねえの。

ガラスみたいに感情のない眼でじっとしてやんの。

その態度が余計にムカついて、益々イジメてやった。


友達はちょっと引き気味だったけど、構いやしない。

亜矢は私にイジメられるために生まれて来たんだ。

だから私のしてることは、間違ってない。


そんなある日のことだった。

何時ものように亜矢をトイレの床に転がして、踏みつけている時だった。


いつも無表情だった亜矢が、気味の悪い笑いを浮かべたの。

そして低いかすれた声を出したの。

それは何だか、物凄く怖い声だった。

――こいつの声って、こんなだったっけ?


亜矢はこう言ったの。

「私、明日死ぬわ。そろそろ潮時だと思うから」


何言ってんだ、こいつ。

死ぬ?勝手にしろよ。

お前が死んだって、私も世の中も、何の痛みも感じねえわ。


でも亜矢の言葉は終わらなかった。

不気味な笑顔もそのままだった。


「私が死んだら、亜弥ちゃん寂しいでしょう?

だって、毎日イジメて鬱憤を晴らす相手がいなくなるんだから。

そうしたら他の子をイジメるの?

その子が死んだら、また次の子を見つけてイジメるの?

そうやって、永遠に続けるの?

それって地獄だよね。

いいね。

私と一緒に、地獄に行こうよ」


次の日亜矢は電車に飛び込んだ。


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地獄へ行こうよ 六散人 @ROKUSANJIN

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