とらいあんぐる・ぐるぐる・すぷりんぐ!

通りすがり

第1話:はるのはじまり

 春の風が校門を吹き抜ける。  新学期、桜の舞う中で水沼海湖みずぬま みこは制服のリボンを整えながら、少し緊張した面持ちで校舎を見上げた。


 「ふぅ……高校生や。今日から、また新しい毎日が始まるんやな……」


 天然でおっとりした性格の彼女は、今日から高校1年生。まだ見ぬ友達との出会い、新しい部活、そして——どこか心の奥に芽生える予感。


 昇降口で上履きを取り出した時、誰かの背中が目に入った。  どこか懐かしい、その後ろ姿。


 「……あれ? もしかして……徠斗……?」


 振り返ったその人影——太田徠斗おおた らいとは、みこの幼なじみだった。  中学では別の学校だったため、数年ぶりの再会だった。


 「水沼……?」


 「やっぱり! おおたくんやんな!」


 少し地味めでクールな印象の徠斗は、一瞬きょとんとしたが、すぐに静かに頷いた。


 「久しぶり……同じ学校だったんだな」


 嬉しさと照れくささが入り混じった、再会の朝だった。



---


 放課後。  部活動紹介が行われ、みこは体育館でバドミントン部のデモンストレーションを見ていた。


 「すご……シャトル、あんなに速く飛ぶんや……」


 その時、キリリとポニーテールを揺らしてシャトルを打つ少女が目に入る。  しなやかなフォーム、躍動感あるステップ。そして——徠斗がその子と組んでダブルスをしていた。


 「ふじすず はるです! バドミントン部、入ってくださいねっ!」


 プレイ後、晴はマイクを持って元気よく叫んだ。眩しい笑顔に、みこの胸がちくりとした。


 (……あの子と、仲いいんかな?)


 そんな想いを抱えながら、みこは静かに呟いた。


 「……うちも、バド部、入ってみようかな」


 こうして、春の風の中で3人の物語がゆっくりと動き出す。

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