デュエル
第12話 ワッツ・イズ・デュエル
「と、いうわけで、闇魔法を含めた攻撃系魔法を上手くコントロールする技術を身につけねばならない訳なんですけども。あたしは一体どうすればよろしいでしょうか、テイラー殿」
「んん……いきなりそんな事言われてもなあ……」
十月二日の、長い残暑が別れを告げて涼しくなった昼休みのこと。
アリナの唐突な質問に、シャーロットは困惑するばかりであった。
アリナは幼い頃から、何か困った事があればいつもシャーロットに相談していた。
テストで点を取るタイプではないが、シャーロットは意外にも博識だ。
呪怪に関することだけでも、彼女の知識に何度も助けられたのだ。
ただ、今回ばかりはシャーロットにとっても難問らしい。
「ああ……。まあそうだよなあ。
攻撃系を日常生活で使う場面、スープレックスの調子悪い時ぐらいだしなあ」
「え、アリナどんな生活送ってんの……?」
「え、至って一般的ですけど……?」
「ううん……? まあいっか。要は、攻撃系魔法を使う機会というか、えっと……そういうのがあればいいわけね?」
「そそ。そーゆー事。けど語彙力どこ行った」
シャーロットは博識だ。
それは、全く間違っていないのだが。
彼女の場合、博識と賢さが結び付かないらしい。
博識≠賢さ。
「語彙力なんて産まれた瞬間から無縁だよ。んー、どうすればいーんだか……」
こめかみに右手の人差し指を当てて考える。シャーロットの癖だ。
「別にすぐって訳じゃないから、いいんだけど。わざわざありがとね、考えてくれt」
「……デュエル倶楽部」
「……え?」
「デュエル倶楽部だよ、ちょっと試してみたら」
「なにそれ」
シャーロットによると、デュエルというのは魔法を使った対戦スポーツらしい。
デュエル倶楽部というのも、名前の通り決闘を主に行う、グレートバース校にあるメンバー不定の団体なんだそうだ。
「あのさ、ロッティ。いっこ言わせて欲しいんだけど」
「うん、なあに?」
「ハ◯ポタのパクリじゃん⁉︎」
「別にいいじゃん⁉︎」
「いやそこは否定してよ」
実際、ハリ◯タから考案されたらしい。
「でも、ハリ◯タと現実の魔法ってだいぶ違うから、ルールとかも結構違うよ?」
「ふーん。どんなん?」
「試合が始まったらどんな罵声を浴びせてもよくてぇ」
「まってなにそのルールやめてこわい」
感情が荒ぶると、魔法のコントロールに多かれ少なかれ支障が出る。
そう考えれば合理的ではある。
「あとね、試合終了の条件に一個も当てはまらなかったら延々と続くの」
「クィ◯ィッチじゃん」
「いやス◯ッチとかないから。条件はいくつかあるんだけど。一個目が、どちらか一方が降参することで」
「ああ、マトモそうなの来た」
「二個目が、一方が戦闘不能になること」
要するに、かなりの重傷を負うということである。
「……ロッティ、それだいぶ危険なんじゃ……?」
「そりゃ、
「そんなもん友達に勧めんな!」
シャーロット曰く、本当に重傷を負うまでの死闘になるのは稀らしい。
その前に降参する選手が殆どだからだ。
「だから、大丈夫だよ(多分)。私とてそこまで詳しい訳じゃないんだけどね……。別に強制でもないわけだし、一回見るだけ見てみよ? ね?」
「確かに、ただ見る分には普通に面白そうだしなあ。そういうことなら明日、見に行ってみるか」
どう考えても大怪我不可避のスポーツだが、魔法の特訓にはもってこいである。
そう考えたのか、アリナはデュエル倶楽部に参加すると決めた。
「そういえばね、闘いが激しくなると観客席の方まで魔法が飛んでくるとかこないとか」
「……ロッティ、言い残すことはございますか?」
一言も言わぬ間に、アリナにスープレックスをかけられていた。
長い付き合いの幼馴染だが、これはシャーロットがその主人公補正の洗礼を受けた初めての経験となる。
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