第2話 テイマーと狂戦士?
▽第二話 テイマーと狂戦士?
シュマロがゴブリンを討伐した。
それに伴ってレベルアップしたようだ。カイトは己が背中に宿っていた熱が、嘘のように払拭されていることに気がついた。
スマートフォンを使って背中を撮影してみる。
破れたTシャツの無残な姿。
姉の旦那よりいただいたビンテージらしいTシャツは、有名映画俳優が真っ赤に染まったり破けたりで、見事な戦死を遂げているかのようだった。
腕を伸ばして背中をさする。
傷が癒えていた。
「レベルアップ後の全回復か……すごいな。てか怖い、どうなってるの」
「わんわん!」
「……うわあ、グロ」
近づいてくるシュマロ。
その口腔付近には大量の血液が付着していた。噛み殺したのだろう。その純真無垢で汚れを知らない、毛玉のようなスマイル顔と血痕。
なんか怖い。
そうどん引きするカイトの胸に、シュマロが勢いよく飛びついてくる。うーうー、と嬉しそうに唸りながら、その鼻先を身体に埋めるようにグリグリと押しつけられた。
血が服につく……
「まあな、犬だもんな、こういうこともあるか」
「くぅーん」
「そうか、くぅーんか」
腹を撫でた途端に寝転がり、嬉しそうに「はあはあ」するシュマロ。
カイトは起き上がった。
手の中にはカードが握り込まれている。
「これがジョブカードってやつかな」
「わん!」
「へえ、お前もか」
シュマロの首輪にもカードが挟まっている。
初めてレベルアップした時、人や動物は【ジョブカード】というものを取得する。カイトがカードを確認してみたところ、こうあった。
名前【カイト】レベル【1】
ジョブ【テイマー】
スキル【テイマーの基礎】
これだけだ。
続いてシュマロのカードも確認してみる。首輪付近に手を伸ばせば、撫でられると勘違いしたシュマロが嬉しそうに手を舐めようとしてくる。
それを躱してカードを抜き取った。
シュマロは首を傾げている。
名前【シュマロ】レベル【1】
ジョブ【狂戦士】
スキル【狂戦士の基礎】
狂戦士らしい。
こんなに純真無垢な顔をしているのに……
スマートフォンでジョブ情報を調べる。
どうやら【狂戦士】というのは、かなり厄介なジョブらしい、ということが判明した。まず、狂戦士が皆共通で取得する【スキル】というものがある。
それが【狂戦士の基礎】だ。
その効果は「負傷無効と痛み無効」だった。これだけ聞けば最高の能力のように思われるが、これに付随してくる余計なデメリットも存在してくる。
それが「被ダメージ20パーセント上昇」だ。
怪我もしない。
痛みも感じない。
HPが0になれば当然死ぬ。
だというのに、攻撃を食らった時、人よりも20パーセントも多くダメージを受けてしまう。このことから【狂戦士】は死傷者が多いジョブらしい。
もうひとつの能力は「HP減少に応じて、攻撃力が最大3倍まで上昇する」能力だ。
「大丈夫かよ、これ」
「?」
「……」
またジョブには特有の「罪」が存在する。
三大欲求がひとつ増えるようなもの、と思ってもらえれば正しい認識だ。狂戦士の場合は「一日に一度、魔物を討伐すること」である。
我慢することはできる。
が、数週間単位で我慢すると発狂しちゃうらしい。
「最悪だ……」
「?」
きょとん、とした顔をするサモエド。
このともすれば天使じみた愛嬌を持つ犬が、よもや狂戦士だとは。
この日より愛犬を発狂させぬため、日々の散歩に加えて「一日一殺」を心がける必要が出てきたのだ。
カイトはこれから待つ日常の変貌に頭を抱えた。
シュマロも真似をして、伏せて耳を前足で隠した。飼い主も流石に笑顔にさせられた。
次回 報告とお散歩
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