二十九刀目 強すぎる、の意味
また翌日。
俺の体調は悪くなる一方。
それにあわせて、みんなの荒れ具合もどんどんひどくなっていく。
そういえば、暦之助先生に聞こうと思ってたんだった。
俺は、ハム之助先生を呼び出す。
「先生、あの、最近体調が悪くなると同時にみんなが荒れてってるんですけど」
暦之助先生は深くため息をつく。
「……やっぱりか」
やっぱり?やっぱりって、何が?
「いいか、お前の魔法は和。それに対になる魔法、離。この2つの魔法があるから、安定したこの世になってんだ。じゃあ、お前が体調を崩したら?和の魔法だけ働きが鈍くなって離の魔法だけ働きが強くなんだよ。離の魔法は相手は敵対相手だという錯覚を持たせたり、興味がないから関わらない、という感情を抱かせたりする。ようするに、お前の体調が悪くなる事にこの地球は崩壊していくんだよ。お前が治さないと、最悪の場合、戦争起きんぞ」
……え?
俺のせいで、関係ない人が、死ぬ……?
しかも、たくさん?
世界の平和のためには俺は体調を崩しちゃいけない?
俺の魔法を見て、カナさんや冬和、勝人さん、要さんは「強すぎる」と揃いも揃って言った。
それは、単純に攻撃力が高かったり防御力が高かったりするだけではなく、周りの人への影響力が大きい、という意味も含まれていたのかもしれない。
いや、戦争が起きるかも、ということは、周りの人どころか、地球上の人への影響力、かもしれないけど。
「わかったら、早く寝ろ。今日は家に帰ってもいい。お前の家のやつのことだからな、そういうのに強いヤツが多いんだよ。家で看病してもらえ」
「……わかりました」
少し、いや、大分メンタルが削れた。
……帰って寝ることにしよう。
俺のせいで犠牲者とか、出てきて欲しくない。
「ただいま……」
俺は恐る恐る扉を開ける。
「ん、おかえり」
……あれ、冬和が、少し優しくなってる?
「あの、朝、もう少し冷たかったような……」
「そうだったけか?考え事をしていたからかもな。すまない」
「そっ……か」
冬和は少し眉をひそめて尋ねる。
「どうした?お前、今授業時間のはずだろ」
「うん……体調悪くて、先生に早く治せって」
そういった瞬間、冬和が走って俺を抱え上げ、寝室まで走って連れていき、慎重に布団に寝かせて、俺の刀を鞘ごと抜いて楽な格好に着替えさせてくれて、ついでに掛け布団まで掛けてくれた。
優しい。
「だから言っただろ、体調悪くないのかって!」
「う、うん……ごめん、冬和」
冬和はどこかから袋を持ってきて、その中に氷を入れて、薄い布で包んで俺の額に当てる。
「早く治したほうがいい。お前は寝てろ」
「……うん。ありがとね、冬和」
冬和は、そっぽを向いて言った。
「……別に」
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