転生召喚したら死にたがりが来た話

ちりめん弱し

一話 落ちた。

落ちた。屋上から。


人生に絶望したのだ、と言ったら軽く聞こえるだろう。


これまでの人生、辛いことばかり起きてて、これから先にもっと辛いことがあるそうだ。


は???なんでお前らは逆に、生きれるの?


私は自分の人生が特別不幸だとは思えない。


ちょっと選択肢を間違えただけだ。だけどどこから間違っていたのだろう。


そうして思考のループへ突入。


あ、走馬灯が見えた。







いじめられた記憶と、かつて幸せだったような気がする記憶が流れてくる。


グチャっと音と衝撃が走った。


走ってくる先生と、悲鳴をあげてるいじめっ子が、ぼんやりとし始めた視界でかろうじて見えた。


そのままトラウマになっちまえ、と思う私は悪い子だろうか。


無に帰る。今から。


大丈夫。もう、辛くならないよ。













。◯●◯。












「聖女様がお目覚めになられたぞ!!」




 


  





眩しい光と神官?みたいな格好の人々、教会っぽい場所が目に、入ってきた。


あれ、私、死んだんじゃ……?


その瞬間、割れた心が踏まれた音がした。









「〜〜なので、この世界は貴方様を必要としているのです」


「そ、そうなんですか…」


正直、半分くらい聞いてなかった。

この世界はRPGのようなファンタジーの世界で、魔王なんちゃらと戦争になってるとか。

勇者がいるのはいいけど、その勇者も洗脳されてしまったとか。

魔王の洗脳を解けるのは私だけとか。


転生したが、普通の転生じゃないらしい。

転生召喚とか言ってたな。

どっちかっていうと、憑依型っぽい。姿が美少女になってる。

この体の主ごめんね……。


「と、いうことで、早速魔法の訓練といきましょうか。」

「へっ?」


ちょっと空耳が聞こえたような……


え、流石に……初日でやるとか、え、あ、頑張る。


「魔法の訓練ですよ」


「いきなりじゃありません?そもそも私の魔法って……」

「さっき言ったでしょう、光魔法、回復と状態異常を治すやつです」


え、なにその魔法。めっちゃっ気になるんですけ

ど。

て、いうかその魔法でどうやって洗脳を解けば……。


「私は魔法が使えないんじゃ……」

「魔力が少ない世界から来たんですかね……あなたは強い魔法の持ち主ですのに」


え……あ、どういうこと?


ちゃんと説明きいときゃよかった……。

私、馬鹿じゃん。


と、いうかこの人ちょっと冷たい。

興味ないのがにじみ出てる。

興味ないのに付き合ってもらってすみません……。


。◯●◯。


「魔法はイメージです。〜〜で〜〜という感じに」


なんかそれ某葬送のアニメで聞いたな。

落ちた後、なんか少し胸がスッキリしたのはリストカットと同じ原理だろうか。

でもこの世に対する憎しみは変わらない。いや、さっきいた世だからあの世?

ぐるぐるし始めた思考。こうなるとしばらく止まらない。


「では実際にやってみましょう」

「は、はい!」


返事だけはいいものだ。

私は出された石を触ったり念じたりしてみた。


「……聖女様、魔力を込めるのです」

「魔力って……私分からないですし」

「まあ、それはこれから学んでいきましょう」

「は、はあ。」




。side??。


聖女としてやってきたのは、絶望に塗られた青い瞳のおどおどした娘だった。


もとの体の娘は、生け贄にされることを絶望はしていたが、ここまでではなかった。


聖女転生召喚は、あちらの世界で聖力が最も強い女性を心をコントロールして殺した後、魂を生け贄に取りつかせるという、非人道的な儀式だ。


なぜそんなのがいいとされてるのかは、分からない。分かりたくもない。

でも、それはいったん置いといて。


前の聖女の姿はしらないし、どういう反応をしたか実際には見てない。

でも、死んで無いことを絶望しているように見えたのは、正常じゃないことが分かる。


この娘は、どちらにしろ死のうとしていたのではないのだろうか。


それに気づかないでメンタルケアもしようとしない仲間も、ここまで追いつめさせた奴らも憎たらしい。

とりあえず報告しといたが、この腐ってる神殿で、生き残れるのだろうか。


いや、私が助けるんだ。


一人のシスターは心の中で祈った。


生きやすい世の中にならないか、と。

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転生召喚したら死にたがりが来た話 ちりめん弱し @yuikatayama

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