スマートホームの住人
@heppoko9
序章――それは便利な日常だった
第1話
その家は、まるで彼女の動きを見透かしているかのように振る舞う。朝が始まると、寝室のカーテンがタイマー設定通り自動で開き、窓越しに差し込む柔らかな光が由衣を目覚めさせる。同時に、リビングから漂ってくるコーヒーの香りが彼女の眠気を吹き飛ばす。コーヒーマシンが自動で彼女の好み通りの濃度で淹れた1杯を準備しているのだ。
「おはよう、由衣さん。今日も素敵な一日をお過ごしくださいね。」
AIアシスタント「メイリン」の柔らかな女性の声が、スピーカーから流れる。彼女の朝のルーティンをすべて把握しているメイリンは、スケジュールや健康を管理しつつ、由衣の生活を豊かにしていた。声命令一つで照明や室温が調節され、キッチンの冷蔵庫は食材が不足すれば自動で補充する注文を行うなど、どんな細かなことにも気を配っている。
由衣はテーブルに置かれた出来立てのコーヒーを手に取ると、スマートスピーカーを見ながらつぶやいた。「ありがとう、メイリン。」メイリンの応答は心地よく、「どういたしまして、由衣さん」と響くその声に、彼女はほっとした気分になる。
最初は面倒に思えた最先端家電やAIの導入だったが、今やそれなしの生活には戻れない。仕事に忙殺される日々だけれど、スマートホームのおかげで、プライベート空間では極力ストレスを減らすことができている。掃除、洗濯、料理といった面倒な雑事はほぼ自動化され、身体的にも心的にも余裕を持つことができた。
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