第5話


 翌朝、ふと気がつくと私は草の中で寝ていた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「とても全身が痛いのだけど…」

 床に寝たこともないのに、いきなり屋外で眠ったからか全身がボキボキと痛い。意識を失う直前、妹の真似をして何度も聖属性魔法を唱えていた。思えば、昨日はショックなことが多かったし、疲れていたのだろうか。にしても外で寝るのは前代未聞だ。まあ、ホコリだらけの納屋よりはマシかもしれないが。

「私の部屋、無くなっちゃったわ」

 お父様は、私の部屋から本を持ち出そうとして、思ったより多くて面倒になったのだろう。

 ただでさえ広くはない部屋なのに、本棚が幅をきかせていて狭かった。けれど、祖母との思い出の品や、昔から使い続けた勉強机、日記など愛着のあるものが沢山ある。

「あ…!制服!」

 そうだ、普段着も寝間着も外出着も、魔法学校へ着ていく制服もまだ部屋にある。

「どうしよう…勝手に部屋に戻ったら怒られるわよね…」

しかし、制服が無ければ学校に入れない。どうしようかと思案していた時だった。私の耳に誰かの楽しげな声が聞こえる。


「リミス、ほら、胸元のリボンが曲がっているわ、これから神官長様にお会い

しに行くのよ。」

「そうだぞリミス、お前は愛らしいし聡明だが、少し抜けている所がある。お偉いさんの前では気をつけなさい」

「あなたもネクタイが裏表逆ですわよ」

「…これは失敬!」

「もう!お父様ったら!」

 クスクスと楽しげな笑いが聞こえる。咄嗟に茂みに隠れて様子を見ると、私を除いた三人は 玄関に向かうところのようだ。だが、今日は外出の予定があるなんて聞いてない。何より、今まで見たことがないほど仲睦まじげな私の家族の光景を久しぶりに目の当たりにして、驚く。何をするのかどうしても気になって後をつけた。すると、玄関口の柵付近に馬車が止まっているのが見えた。

「…。」

「…!……。」


 流石に遠くて何を言ってるかは聞こえないが、おおよそ三人の行き先は見当がついいた。

「リミスの聖跡の鑑定に向かわれるのね…」


 本来マルガレータが聖女として覚醒されると言われてきたのは10才だ。二年の空白期間の間、お父様達はさぞ、周囲の貴族や神職の者に好奇の目で見られただろう。それが今日で終わりとなれば肩の荷が下り、機嫌も良くなることだろう。

神官の中には不思議なことや超常現象などを「神の御業」か「普通の現象」か「ペテン」かを見分ける者もいると聞く。恐らくはここ王都ではなく、隣の町にあるルチア聖堂に向かうのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

出来損ない聖女には顔しか取り柄がないので、旦那と勝手に生きていきます! 砂利じゃり @jajaja_jariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る