第12話 返してもらうよ
状況が完璧に理解できるわけではないが、どうやら今夜の『取り立て』の相手は、元々同じ組織の人間だったようだ。何かをオヤジから騙すか盗むかして、この限りなく下層スラムのようなビル街に潜んでいたのだ。目的はカネになる仕事、それが上手くいけばそのままとんずらで、自分で新たな組織でも作ろうとしていたのだろうか。
ということは、今夜『取り立て』るものは、こいつらがオヤジから掠め取った何かか、それともこいつらの命か。
「いずれにしても、てめえらはもう終わりなんだよ。わかったらさっさと返すモン返しな!」
「返せるわけないだろ! いますぐなんて無理だ!」
「わかってねえな、ガキが」
「シミズさん、もういいです」
突然聞き覚えのある声がして、おれは入ってきた部屋の入り口を弾かれたように見た。
何の前振りもなく、唐突に現れた。考えてみれば、こいつは初めからそうだった。唐突に現れて、おれが期待し続けた存在を銃撃して、おれの人生を唐突に塗り替えた。
「なんだあ、ミナト、てめえ、来てたのか」
「カシワバラさんに言われて。あとは僕がやります」
ぞっ、と、背筋が冷えるものがあった。ミナトがこんな話し方をするところを見たことがなかったからだろうか。これまで見た、おれが知っているミナトとはまるで異なる、不気味なほどの落ち着きを持った雰囲気は、冷たいものを感じさせた。
おれが訓練に明け暮れていた時間で、ミナトは既に組織の幹部連中と普通の会話が成り立つほどになっている様子だった。それだけ仕事をこなしてきているのだろう。シミズと呼ばれたサングラスの男が、ミナトの言葉に異論を唱えずに部屋から出ていこうとしている状況からも、いまのミナトが組織の中でどんな存在になっているのかがわかる。
「やめろ、来るな……!!」
若い男たちが一様にミナトが近づくのを恐れて部屋の壁際まで寄っている。ということは、この男たちもある程度はミナトがどんな存在なのかを知っている、ということか。本当に、おれが訓練に明け暮れている間に、ミナトはこの組織の中でどこまで行ったのだろうか。
「借りたものは返す。借りた恩は返す。そういうものだよ」
「わかった! わかったから……」
若い男のひとりが言いながら伸ばした片手を、ミナトが掴む。その瞬間、男の腕が爆発した。
「オヤジのもの、返してもらうよ」
爆発した男の腕は切り離され、ミナトの手の中にあった。男の悲鳴が響き、その悲鳴を断ち切るように、今度はミナトが男の逆の手を取る。そちらも同じく爆発し、『非強化』の男の両腕が切り離された。爆発から霧状に噴霧した血飛沫が舞い、両腕を失った男はこと切れたようにその場に崩れた。
おれはミナトの手の中にある二本の腕を見た。
切り離されて、初めて分かった。
それは、機械の骨格を持つ『強化』された腕だった。
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