第7話 仕事だ

 それからおそらく数日は、銃器の扱いと格闘戦の同じ訓練を繰り返した。




 おれはカシワバラに殴り勝ち、カシワバラに殴り負け、時には『隠密インビジブル』を発動してボコボコにしながら、『強化ブーステッド』の身体を、『強化』という生き物を理解していった。




 何日も経っているはずだったが、射撃訓練場と格闘訓練用のホール、それから休息を取るために宛がわれた、小さなベッドだけがある、そのベッドとほとんど同じサイズに自室、三ケ所しか移動しない、屋外を見ることもない生活では、どれほどの時間が過ぎているのかあいまいであったし、疲労も空腹も、生身であった頃に感じていた生々しい感覚が鈍った身体では、時間の経過も大したことには感じなかった。




 訓練を続ける中でも、ミナトが姿を現すことはなかった。一度だけ、カシワバラに訊いてみたことがあったが、カシワバラも別のところで訓練していると聞いている、としか答えず、それを答えた後、当のカシワバラ本人がおれの訓練をしに来なくなった。ミナトのところへ行ったのか、ワカガシラとしての仕事が忙しくなったのか、何も告げられることはなく、おれは他の『強化』と相変わらず殴り合い、殴り勝ち、殴り負ける生活を続けていた。




 時間の経過はあいまいであったが、おかげさまで射撃戦も、格闘戦も、それなりにこなせるようになっていた。もちろん、『隠密』を使った格闘戦も。ただ、気にかかっていたのは、この訓練が始まる前にオヤジが言ったことだ。




「もう一つ、それと一緒に使える武器を仕込んである」




 カシワバラに連れられてこの訓練生活に入る前、オヤジはおれに、確かにそう言った。だが、この身体に仕込まれた、という武器の説明は、いまだに受けていなかった。




 そしてその武器を、おれは意外な形で行使することになった。




 その日も射撃訓練場から格闘訓練の流れでホールに入った。いつものように格闘訓練をする数人の『強化』の姿が見え……と、その中に初めて見る顔があった。『強化』されているので実際の年齢はわからない。見た目だけでいえば三十代くらいか。若者、と言ってもいいが、おれと同じというには少し行き過ぎている。そんな様子の男だった。男はどうやら他の『強化』構成員からは一目置かれている様子で、組織のナンバー2、ワカガシラであるカシワバラほどではないにせよ、その場にいる男たちの中では上位にいる様子だった。




 その男が、おれを見た。




「おまえがカシワバラの兄ぃが言ってたやつか」




 特に答える義理もないので黙っていると、男が歩み寄ってくる。真っ黒な背広スーツに丸刈りの頭。眼球が『強化』されているのであればさほど意味はないはずのサングラスをかけた、いかにも、な容姿の男は、おれの傍まで来るとサングラスを外した。




「付いてこい」



「は?」



「仕事だ」




 男はそういうとサングラスを掛け直し、さっさと歩いて行ってしまう。




 おれは質問すらできずにその背中を負った。

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