忘却の都市

HANA

第1話 プロローグ

目の前に広がるのは、見覚えのない場所。




......いや、違う。




「身に覚えがない」という表現では、何かが足りない。


確かに知っているはずなのに、その輪郭だけが不鮮明なまま浮かんでいる。




遠くから響く音、規則正しく並ぶ建物、一定のリズムで流れる空気。


すべては「現実」であるはずなのに、どこか夢と現実の境界にいるような感覚が拭えない。




——思考がゆっくりと形を持ち始める。




霧が晴れるように、曖昧だったものが少しずつ結びついていく。


まるで、散らばっていたピースが、一つずつはまっていくように。


やがて、視界が少しずつ鮮明になっていく。


そして——。


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