神祖72

天廻月媛

第0話 プロローグ「貴女がいた街」

その日、世界が滅んだ。大地は焼けただれ、街は吹き飛び、人々は灰となった。空一面に翼のはえた巨大な金色こんじきの仏像のような巨人がその手に持った金剛杵こんごうしょを振り下ろす。その直後だった


 「裂空れっくう」美しくかん高い声と共に刀が振るわれ、時空が、宇宙が、世界が裂け、金剛杵こんこうしょを粉砕する。声の主である少女エースは身の丈ほどもある、蒼く輝く大太刀「空即是色くうそくぜしき」を構えながら次の攻撃に備える。次の瞬間、彼女エースの前方で重力崩壊が何千、何万と起こり生じた奈落ブラックホールより、どれも平均数百メートルはあろうか?無数の怪獣が解き放たれる。それを見た彼女エース空即是色くうそくぜしきを振りかぶると叫んだ「崩界ほうかい」そして一刀を振るう。刹那、時空が、宇宙が、世界が音を立ててひび割れ、砕け散り崩壊してゆく。崩壊に巻き込む形で怪獣と奈落ブラックホールは全て消し去られた。

 ......それでも彼女エースの劣勢は明らかだった。巨人が拳を振るう。彼女エースはそれを空即是色くうそくぜしきで受け止めるもののそのまま地球だいちに叩きつけられる。地球だいちに亀裂が走り、砕ける音が宇宙そらに響く。それでも彼女エースは立ち上がり、口から血を吐きながら叫んだ「レンは■■■■■」そして笑った。

 その直後俺は時と歴史の奔流に呑まれる。俺は叫んだ「エース!」そして思い出す、あの日の記憶を


 その日、俺は彼女エースに出会った。それが例えどれだけ月日が流れ、記憶が磨耗したとしてもその夏の暮れに輝く星のような藍の瞳の色と誇りと高潔さに満ちた輝きを忘れることはないだろう。何故なら彼女エースは俺の心をその曇り無き眼差しで焼いた、溶けるように鮮明な初恋の人だから。大好きだよ、エース......君のことをこの世界全てより愛している。

 あの夜に君の月光のような気品に溢れた金色こんじきの髪が風になびき、一番星より眩しい微笑みを浮かべ、俺の手をとったその温もりは今でも俺を焼き焦がしているよ。

 最後にそれだけ思うと俺の意識は薄れていった

 

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