その後

33.「リカルド様との旅路の記録」

 こうして私が綴った物語は、世に数多ある「勇者リカルド」の伝記のひとつに過ぎません。


 王都の図書館に行けば、彼の輝かしい功績を称えた記録はいくらでも目にすることができます。


 魔王を討ち、世界を救った英雄。

 現界と魔界を繋ぎ、平和を実現した英雄。


 きっと、その名はすでに歴史に刻まれ、伝説として語られ続けてゆくでしょう。


 けれど、ここに記したのは、どれも“私が見た”当時のリカルドの姿です。


 仲間と笑い合い、ときに悩み、迷い、傷つきながら、それでも歩みを止めなかった背中。

 世間が語る「絶対の英雄」とは違う、“ひとりの人”としての彼。


 私が描く記録は、きっと珍しいものだと思います。


 死霊術師という立場でありながら、彼と共に在り続けた者の目線。


 長い旅路の果てに得た答えは、とてもシンプルでした。


 仲間と共に歩んだ日々は、どんな宝よりも尊く、その中心には、いつもリカルド様の背中があった――。





著者 ナディア・エンブリオ(ベルモンド)

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