第2話 現代版さるかに合戦(後編)

 その葬儀の場で、幸太はある人物に出会いました。

「あなたは栗林さん。臼井さんに蜂ヶ谷さんまで。」

この三人はかつて父の会社の同僚であり、とても親しい仲でした。

そんな彼らはその事件に疑問を持ち、猿島を探していたのです。

「お久しぶりですね皆さん」

「ええ、まさかこんなところで会えるとは思いませんでしたよ。」

「全く、あの猿島はどこにいるのでしょうか」

「おいらも知りたいぜ。あんな野郎死んで当然だからな」

「そこでですね。私蜂ヶ谷美里、栗林幹久、臼井健大の三人で猿島に一泡吹かせようと思います」

「それでどうするのですか?」

「実はこの前ある筋から情報を得たのです。なんでもあの猿島という男は、今東京にいるらしいのです。」

「本当ですか!?」

「はい、確かな情報です。しかも彼は株の売買で儲けた金で豪遊していると聞きました。」

「そんな、それは許せない!」

「ええ、だから私たち三人とも協力しましょう。」

「分かりました。では早速その猿島を探しに行きます。ありがとうございました」

幸太は三人に感謝の言葉を述べて、その場を去りました。

「あの男には絶対復讐してやる」

こうして蟹江は猿島を探しに行った。

猿島が金持ちになったことは既に街中の噂で探すのは簡単だった。

今は桃園町のタワーマンションの上の階に住んでいるらしい。ほかにもいくつかの方法で金は増やしたらしい。

「あの男、いつか見てろよ!」

蟹江はそのビルを見上げながら、そう叫んだ。


猿島のもとに電話がかかって来た。

「はい、もしもし、ああ栗林さん。何か用ですか?」

「あぁ猿島さん。ちょっとあなたに頼みたいことがあってね」

「何でしょうか?またお金の催促でもするつもりですか?」

「ちげーよ。もう返し終わったろ。まあ、まずは白洋公園前の喫茶店にでも来てくれや。」

そう言って電話を切った。

「仕方がないか。元からあの男苦手なんだよな。栗だけにとげがある。毒舌でちくちく刺されそうだ。」

猿島は仕方なく、指定された場所に向かった。

「よう猿島。よく来てくださったね」

「はあ、一体なんの御用でしょうか?」

「まあ、座れって。」

猿島は言われるがままに個室の席に着いた。

「単刀直入に言うがね。お前の顔を見たいってやつがいるんだよ」

「はあ?誰だい。俺の経営センスでも見て学ぼうっていうのかね」

「さあね。おい入ってきていいぞ。」

蜂ヶ谷がそう言うと男がてくてく入って来た。

猿島はその顔を見て驚いた。彼は蟹江光輝の一人息子で彼も昔から家に行くたびに会っていた。幸太ではないか。

まあ、彼自身はいつも猿島が来るたびに母親の背中に隠れていたので直接話したことはないが。

「幸太君じゃないか。いや、先のお父さんのことは残念でならないよ」

己のことは棚に上げて、猿島は額面通りのあいさつをする。。

しかし、幸太は猿島の言葉を気にしていない様子で、こう言い放った。

「父さんの仇を討つためにやって来た。覚悟しろ!」

「おい、どういうことだ」

「どうも何も、あんたがやったことをそのまま返すだけだ。」

「何を言っているんだ。俺がお前の父さんを殺した?そんなわけあるか。父親の死が受け入れられないのは、あんたの勝手だがそれを他人に押し付けないでもらおうか」

すると、蟹江は猿島にレコードテープを差し出した。

「この中には俺の父さんとあんたの話し声が入ってる。俺の父さんは金の話をするときは必ず言質を取っておくんだ。遺品から見つかったときはビビったよ。」

「この音声データが何だって言うんだ」

「もうわかっているだろ。親父はあんたに金を騙し取られた。そして、そのせいで自ら命を絶ったんだ」

「証拠はあるのか?」

「まだ認めねえつもりなのかよ。往生際が悪いな」

蟹江はそう言ってテープを流した。

そこにはやはり、猿島がだましていた証拠の音声が流れている。

「ははは、そうだよ。俺があの蟹江の爺から株券をだまし取ったんだ。」

「やっぱりな!この外道め!」

「なんだと。」

「あの時言ったはずだ。金は返してもらうってな。」

「だから、それが何の関係があるというのだ。俺はあの蟹江のジジイから金を奪った。そして、その金で豪遊した。それは認めようか。

でも、あの爺さんは勝手に自殺したし、俺に責任なんかないぞ」

「そんな外道なことがあるか!」

蟹江は一気に叫んだ。

「悪いな。世の中はお前より俺を中心に回っていたようだ。まあ、せいぜい貧乏人君は日銭でも稼いでいきてればいい。」

すると蟹江は笑って

「言いましたね。あなたがうちの父さんを騙したと」

「!?どういうことだ。」

すると個室に蜂ヶ谷が入って来て、

「警察だ。猿島兼久、詐欺容疑で逮捕する。」

「待て、蜂ヶ谷お前警察に就職してたのか・・・」

「ああ、そうだよ。だからお前みたいな悪徳詐欺師は許せないんだよ!」

こうして猿島は逮捕された。

その後、猿島は他にもいくつかのことをしていたらしく多額の賠償金が課せられ、刑務所行きとなった。

父親が死んだと聞いたとき、幸太はとても悲しかった。それと同時に彼が今までしてきた悪事の数々を知った。

彼の父が猿島からお金を騙し取られていたという事実には、正直驚きを隠せなかった。

「あいつは俺の親を殺したんだ。それなりの罰は受けてもらわないと」

そう言って、彼は刑務所へ向かった。

「猿島、面会人が来てるぞ。」

「誰?」

「蟹江幸太君だ」

「蟹江さんの息子か。ああ行くよ」

猿島は彼に会った。

「やあ、元気かい。猿島さん」

「刑務所にいて元気な奴がいるか。で、何の用だ。」

「俺警察官になることにしたんだ。それで他の連中も逮捕する。」

「へえ、そりゃ大変だな。頑張ってくれよ」

「あんたも、俺の父親を殺したことは忘れるなよ。その何倍もの苦しみを味あわせてやる」

そうして、蟹江幸太は警察官になることとなった。

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現代版さるかに合戦 UMA未確認党 @uma-mikakunin

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