現代版さるかに合戦
UMA未確認党
第1話 現代版さるかに合戦(前編)
昔々、あるところに猿島という男がおりました。
彼はあまり善人とは言えない男でいつもギャンブルに精を出しては泣いて帰ってくるのです。
「ああ、競馬ですっちまったよ。これじゃ今日の飯がねえや。」
猿島がそんなことを考えながら街を歩いていると、狭い町の向こうから大金を持った男が歩いてきました。
「ああ、誰かと思ったら猿島さんじゃないですか」
男はそう言って笑いかけてきます。
「おお、これは蟹江の旦那。どうしたんですかこんなところで」
猿島は思わず駆け寄って尋ねました。
「ああ、猿島さんかい。これはうちの店の事業の金だよ。これから銀行に持ってくんだ」
彼は小さな事務所の最高財務責任者なのです。
「あららら、それはいいや。私さっき競馬で大負けしましてね金がないんですよ」
「全く、あんたも変わりませんねえ」
蟹江は猿島に呆れて言いました。
「だから、おたくの持っているお金が欲しいのですよ」
すると蟹江は少し切れ気味に
「あんた冗談言わないでくださいよ。どうしてうちの大切な金をあんたみたいなフウタローにやらなきゃならないんだ」
しかし、猿島は慌てずに
「まあまあ、落ち着いて下せえ。ここに株券があるんですよ。まあ、今は安いですがそのうち大化けしますから。これを100万円で譲りましょう」
「ふん、そんなこと言ってどうせ胡散臭いんだろ?アンタはいつもそうだ」
蟹江は疑うように言いました。
「いやいや、信じてくださいよー」
「どうして信じてもらえないかおのれの心臓に聞いてみるんだな」
「これが嘘だったら。いい、あの桃園山の大湖に頭飛び込んでやらぁ!」
しかし、猿島は自信満々に答えます。
その言葉には不思議な説得力がありました。
そして、2人は意気投合し、結局蟹江は猿島の持っていた株券を200万円ほどで買い取ることにしました。
「いやー、ありがとうございます。これで今晩は寿司でも食いに行きましょうかね」
「ふん、まあいい。後で街のすし屋にでも行こうぜ。」
そうして、蟹江はその株券を大切に持っていました。社長こそ最初は反対していたが、息子のやることだからと黙認する運びになったのです。
二か月後事件は起こりました。なんと、蟹江が持っている宇宙開発会社の株式が急騰したのです。
しかも、その株価はどんどん上がっていくではないですか! そしてついに1億までいった時、猿島に連絡が入りました。
「ああ、猿島さんありがとね。おたくの株式はもう一億まで行ったよ!アンタもたまには福を呼ぶねぇ」
「あらら、それは良かったですねえ。俺も池に飛び込まんで済んだというものです」
「あはは、そんなこと言わねえよ。まあ、そうだ今度の休みにでも寿司おごってやるよ」
「ああ、それは嬉しい。ではまた連絡しますね。」
猿島はとても嬉しいわけありません。
彼は電話を切るとすぐに不機嫌そうになりました。
「くそっ、あの株蟹江に渡すんじゃなかった。保持していれば今頃俺は大金持ちよ」
彼は200万を得たのにもかかわらず、目先の一億を逃しました。ギャンブル性の強い彼だからそれも運だと分かっていました。
しかし、猿島は金に目がくらんでしまったのです。
「くそ、こうなったら何とかしてあいつから金を搾り取らないと・・・」
次の日、猿島は早速蟹江に電話をかけました。
「ああ、もしもし蟹江さんですか?昨日の件について話したいことがあるのですが」
「ん?なんだい」
蟹江は不思議そうな声を出すのです。
「実はあなたの会社の持っている株式を買いたいのですよ」
「そんなこと言ってもあんたにそんな物買う余裕があるのかい。」
蟹江は馬鹿にしたような口調で言います。
確かに猿島は一文無しだ。一億を超える株なんて買えるわけないだろう。
「いや、ある実業家が買いたいらしくて、山田幸也って知ってますか?」
「ああ、あの最近頭角を現した社長さん?そんな人がいるのか。」
「ええ、それに秘密を言うとたぶんあの会社の株は下がってしまうと思います。最近業績が悪いらしいので」
猿島は嘘をついた。本当はこの会社は業績が良い。だが、それを言うと怪しまれるからです。
すると蟹江は納得した様子で
「ああ、分かったよ。じゃあ今度会った時に渡しておくよ」
猿島はそれを聞くと満足げな顔をして電話を切りました。
そのうち蟹江はその株式を持って、猿島のところを訪れました。
「あれ?山田さんがいないようですが。」
怪しがる蟹江に
「あの人はお忙しいんですよ。今日も名古屋の方に仕事に行かれていて。だから私が株を受け取りに来たんですよ」
猿島はそう言って株を受け取った。
そして、猿島は蟹江に礼を言いました。
さて、その翌日山田氏から金は振り込まれませんでした。というより、振り込まれるわけもないでしょう。
そもそも猿島は蟹江から金をだまし取るためにその名前を利用していただけなのですから。
蟹江は困ってしまいました。そして、その日の夜にまた猿島に電話をかけました。
「あ、もしもし猿島君かい」
「おお、蟹江の旦那。どうしたんだ?」
「それが例の山田幸也氏から金が振り込まれないのですよ」
「あ、それは山田氏が忙しいからでしょう。そのうち振り込まれるでしょう」
猿島はそう楽観的なことを言って電話を切りました。
さあ、この後が大変です。例の金は振り込まれず、そもそも当の一条克己氏に聞いてもそんなことはないと。
そもそもその日はずっと雷門町にいたそうである。これで蟹江もついに彼に騙されたと気づきました。
しかし、もう手遅れである。彼は株券を売って大損したのです。
「くそ、こうなったら警察に訴えるしかないぞ!」
蟹江は必死になって訴えましたが、証拠もなく訴えても無駄でした。
結局蟹江は会社を辞めざるを得なくなり、借金だけが残りました。
そして、そのあとすぐ蟹江は己の命を絶つ結果となりました。
一連の流れで怒ったのはその蟹江光輝の長男である蟹江幸太です。
「あの猿島とかいうやつ許さねえ!」
彼は怒り心頭で、猿島を恨んでいた。
「あいつのせいで俺は人生めちゃくちゃだ!絶対に復讐してやる!!」
こうして、彼は復讐を決意することになるのです。
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