創作論より_試作

@xxxaxxxbxxxc

自分語り型文学と自殺の関係より

完全封鎖型文学_試作モノローグ

※試作のため、ここでの自分語りは作者をさしてません



「蜘」

 自己演出が上手いんですよ。


 別に、他者に優ってる部分がすごくあるわけじゃないと思うんです。現に、他者に価値づけることも同じように上手いです。つまり、狭い舞台を創るのが得意。


 装飾は煌びやかです。だから、舞台に近づいた人には自信を与えられるのに、遠くの人の自信を砕いてしまう。ねえまさか、私の罪っていうんですか。何もしていないのに。


  ──遠くから、なにかが折れる音がします。連動して、呼吸と心拍が速まります。でも、その音すら演出の成功と感じている自分もきっといました。舞台からは暗くて、下にいる人の顔がよく見えないから。


 上演中に聞こえてくる外部の音は、全て拍手です!拍手!拍手しかない!不可視の加害でした。


「私は悪くないの位置に立つのが得意だった」

「自分を騙せるほどに」

「人を壊せるほどに」

「私劇場をつくる才能があった」

「それを磨いたのは純粋な保身と利他心だったのに」

「神様は残酷です」


 私の言動に嘘はひとつだってない。単に事実を演出するのがとても得意。事実はいつも一つだけど、真実は無限にある。わかるかな。


 舞台の下で実際何が起こってるのかなんて、想像でしか分かりません。でも私の罪は、照らされた舞台の上でも踊ります。


 "他者を価値づけるのも得意"と言ったけど、舞台に上げることが加害と紙一重なことにも、強く自覚がありました。


 だって相手を加害したことまで読み取れてしまいます。


 私の劇場に入ってきた時の綺麗な姿から、私の言葉に触れた時の幸せそうな目、身動き取れなくなっていく呼吸まで、繊細に。


 まるで蜘蛛になった気分です。


 そして、考える。そこにどれほどの利害があったかのを。相手の求めにどこまで返して、そしてどこで逃がすべきだったのかを。舞台に残った死骸の一部からです。



緻密に人を壊す術を、自我の確立しないうちから持っていた。それってどれくらいの罪なんですか?



私は弱さをカラトリーにして人を喰う。それしか知らないから。そうやって生き延びて、生き延びて生き延びて、いつか、みんなと同じように静かに眠りたい。


 この舞台は断頭台。その紐が、死骸の重さで切れる前に。

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