第35話 『梨花の挑戦、アスリートの快楽』

 十一月中旬。大学入学共通テストまで二ヶ月を切り、受験生たちの焦燥感は日ごとに高まっていた。多くの生徒が疲労困憊の顔で自習室に籠もる中、西山和樹は、そんな友人たちの身体と心を癒やす「秘密の役割」を続けていた。佐々木梓、小林遥に続き、高橋梨花もまた、和樹との肉体的な繋がりを通じて、受験ストレスからの「深いリラクゼーション」を得ていた。梨花のストイックなアスリートとしての側面と、行為中に見せる官能的な反応のギャップは、和樹の記憶に鮮烈に残っていた。


 その日の放課後、和樹が図書館で自習を終え、重い参考書を抱えて帰路につこうとすると、昇降口の近くで高橋梨花が彼を待っていた。彼女はバレー部を引退後も自主練習を欠かさないだけあって、背筋がピンと伸び、身体は引き締まっている。だが、その顔には、普段の快活な笑顔とは異なる、どこか憂いを帯びた表情が浮かんでいた。

 「和樹くん、お疲れさま。今、少しだけ時間いいかな?」

 梨花の声は、普段より心なしか低く、和樹の心の奥底を探るようだった。和樹は彼女の意図をすぐに察した。梨花は、体調の不調を訴えるよりも、精神的な疲労や、それから来る「解消」を求めているのだろう。

 「ああ、もちろんだ。どうした、そんなに深刻な顔して」

 和樹が優しく声をかけると、梨花は小さく息を吐いた。

 「んー……最近、受験のことばかり考えてて、頭も身体もガチガチなの。バレーしてた頃の方が、よっぽど身体は動いてた気がする。和樹くんのマッサージが、一番効くって、わかったから……」

 梨花はそう言って、和樹の腕にそっと触れ、その指先で和樹の腕の筋肉をなぞった。その視線は、和樹の身体の奥を探るようだった。和樹は、彼女が単なる疲労回復以上のものを求めていることを、本能的に察知した。

 「わかった。うちに来るか?ゆっくりできる」

 和樹が提案すると、梨花の瞳が、何かを決意したかのように、真っ直ぐに和樹を見つめ返した。

 「……うん。和樹くんの家なら、安心できるから。お願い」

 梨花の言葉は、普段の彼女からは想像できないほど、甘く、そして強い期待を含んでいた。


 和樹の自宅に着くと、梨花はすぐにシャワーを浴びてきた。浴室から出てきた梨花は、和樹が用意したTシャツと短パンに着替えていた。彼女の髪は濡れていて、そこから石鹸と梨花自身の体臭が混じり合った、清潔で生命力に満ちた香りが漂ってくる。

 「すっきりした……和樹くん、ありがとう」

 梨花はそう言って、リビングのソファに腰を下ろした。その瞳は、和樹の奥底を探るように、真っ直ぐに注がれている。

 「和樹くん、座って。あの、今日はね……」

 梨花は、和樹の隣に身を寄せた。彼女の頬は、ほんのり赤く染まっている。

 「私、最近、受験のストレスがすごくって……。全身が鉛みたいに重いの。特に、肩と背中、あと……胸のあたりが、なんか張ってる気がして……」

 梨花はそう言って、自分の胸元に手をやった。和樹は彼女の言葉に、一瞬息を呑んだ。梨花からの直接の訴えは、以前にもあったが、今回はより切実だった。

 「私、和樹君にこうして身体に触れてもらうと、本当に心が落ち着くの。身体が全部、和樹君に預けられるような気がして……。それが、私にとって、一番のリラックスなの」

 梨花は和樹の腕にそっと触れ、潤んだ瞳で彼を見上げた。その視線は、和樹への深い信頼と、性的な期待が入り混じったものだった。

 「ねえ、和樹君……私、和樹君のこと、本当に信頼してる。だから……。もっと深く、私を癒やしてほしいの」

 梨花の言葉は、明確な「要求」を示していた。和樹は、彼女の真剣な眼差しに、抗うことはできなかった。

 「わかった。梨花が望むなら……俺は、梨花の身体も心も、全部受け止める」

 和樹が答えると、梨花の顔に安堵と、かすかな喜びの表情が広がった。


 和樹は深呼吸をし、緊張した手つきで、まず梨花の肩からマッサージを始めた。梨花はゆっくりとTシャツを脱ぎ、白いスポーツブラに包まれた、そのバストを和樹に見せた。梨花の身体は、鍛えられているだけあって引き締まっているが、バストはCカップとあって、スポーツブラの中でもしっかりと主張する丸みを帯びていた。和樹は、彼女の健康的な肌に、触れる喜びを感じていた。

 和樹は、乳房の基部からリンパの流れに沿って、優しく丁寧にメンテナンスマッサージを施した。スポーツブラのカップの上から、ゆっくりと円を描くように指を滑らせる。梨花の身体は、和樹の指の動きに合わせて、微かに身悶え、より深い吐息を漏らした。それは、快感の波が全身に広がっていく兆候だった。

 「はぁ……和樹君……そこ……すごく、気持ちいい……」

 梨花の声は、微かに震え、うっとりとした表情で、瞳は潤んでいた。彼女の頬は、ほんのりとピンク色に染まっている。

 次に、和樹は梨花の脚の付け根へと手を滑らせた。ショートパンツの裾から、鍛えられた太ももの肌が覗く。和樹が鼠径部のリンパ節を優しく刺激するマッサージを始めると、梨花の身体は大きく跳ね、甘い喘ぎ声を上げた。

 「あっ……ひぅっ……和樹君……そこは……!」

 梨花の言葉は、途切れ途切れで、理性を失いそうなくらい甘く響く。和樹の指先が、彼女の最も敏感な部分を探り当て、快感の波を次々と引き起こす。梨花の身体は、熱を帯びて、和樹の指に吸い付くように反応する。

 「和樹君……もっと……そこ……お願い……」

 梨花の声は、懇願するように和樹に迫った。彼女の肌から漂う、興奮した体臭が、部屋中に満ちているのを感じた。


 マッサージが進むにつれて、梨花は和樹の腕を掴み、その身体を和樹に預けるように身をよじった。

 「和樹君……私、和樹君のこと、本当に信頼してる。だから……全部、和樹君に任せたいの……。この身体も、心も……」

 梨花の言葉には、和樹への絶対的な信頼と、行為への揺るぎない覚悟が込められていた。彼女の身体は、快感と期待で熱を帯び、和樹の指先に吸い付くように反応する。

 「ねえ、和樹くん……梓や遥とは、どんなことしてるの?」

 不意に梨花が尋ねた。その言葉に、和樹は心臓が止まるかと思った。彼女の瞳は潤んでいるが、その問いかけは和樹の心を深く抉った。和樹は何も答えることができなかった。梨花は、和樹の沈黙に、すべてを悟ったようだった。

 「そっか……。でもね、和樹君……。私、梨花にとって、和樹君は特別だから。和樹君が私を一番気持ちよくしてくれるって、私、知ってるから……」

 梨花の言葉には、和樹への深い愛情と、他の女子たちとの関係に対する微かな牽制が混じり合っていた。和樹は、彼女の複雑な感情を受け止めながら、自分の身体が、彼女たちの心を深く繋ぎ止めていることを改めて自覚した。リビングの静寂の中、二人の間の空気は、一層濃密になっていった。

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