第4話 加代子8歳 幸子 7歳

 湯船の中で幸子がくすくす笑っていた。 その意味がわからない加代子は、いらいらしながら指で幸子にお湯をはねてやった。


「何がおかしいのよ。さっきから笑ってないで教えなさいよ」

 ふんと幸子が横を向く、でも横目で加代子を見てる表情はむしろ話したくてたまらないという表情だった。



「さっき、裕太を抱いてるお姉ちゃんを見たんだ。裸ん坊のお姉ちゃん」



「それがどうしたのよ。別に、あたしだってしょっちゅう見てるわよそんなの」

 馬鹿じゃないのという意味をこめて加代子が言う。



「うふふ、今日ね、よく見たらお姉ちゃんのあそこに少し毛が生えてたの」

 あそこに毛と聞いてすぐに加代子は理解した。


 母親と自分を比べても、股間の感じはぜんぜん違うのを日ごろ気にしていたのだ。


 母親に聞いたら、あんたも中学生になったら生えてくるわよ、とそっけなかった。



「じゃあ、お姉ちゃん中学生になる前にもう大人になったんだ」

 大人になるというのがどういうことなのか、知らないまま加代子が言う。



 幸子だって知らないに決まってる。でも自分は知ってるんだとばかりに言うことに優越感を感じていた。



「お姉ちゃん、大人になるってどういうこと? お股に毛が生えたら大人になるの?」 案の定幸子が聞いてきた。

 今度は加代子が幸子をじらす番だ。



「さあね。子供は知らなくていいことよ」

 くすくす笑う。



 幸子がだんだんいらいらしてくるのが加代子には愉快だった。


 教えてよ教えてよ、としつこい幸子に、しょうがないなといって加代子は洗い場に移った。

 幸子も湯から上がってくる。



「教えてあげるから、ちょっとそこに座って足を広げなさい」

 湯船のふちを示して加代子が言う。



「ええ? 恥ずかしいよ。どうして? 関係あるの?」

 関係なんか無い。でも、幸子を恥ずかしがらせるのが面白くて加代子はうなずいた。



「いやだなあ。じゃあお姉ちゃんも見せてよ。みせっこならいいよ」



「わかったわかった。早く足開いて見せなさいよ」

 幸子の細い足がゆっくり開いていった。



 覗きこむ加代子の目に今にも見えようとしたとき、ちりっという音がして風呂場の電気が消えた。

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